2018年4月14日土曜日

過少医療

立正佼成会附属佼成病院事件は過少医療の問題でもある。過少医療は高齢であるとの理由で適切な医療が受けられないことで、医療を受ける権利の侵害である。
「東海地域の13の急性期病院の1995年から1997年の間の966名の診療録を後ろ向きに調査した研究では、急性心筋梗塞罹患時に冠動脈造影検査や冠動脈カテーテル治療は年齢の上昇に伴って施行率が落ちていた。2001年から2003年の間の414名の超高齢者(80歳以上)を対象にした同様研究で、冠動脈カテーテル治療が超高齢者でも死亡率を下げることが明らかとなったことを考えると、高齢であるとの理由で標準的な医療が受けられない現実が実証された」(植村和正「高齢者の終末医療」学術の動向2006年6月号32頁)

方針は医師と特定の家族が独断で決めるものではない。「医師、看護師、薬剤師、ソシャルワーカー、介護サービス担当者、臨床心理士、ボランティアなど、家族を含めたチーム医療体制が不可欠である」(植村和正「高齢者の終末医療」学術の動向2006年6月号28頁)
患者や家族と医療チームの間の話し合いのレベルも問題になる。大雑把な方針だけを話し合って話し合いを満たしたとすることはできない。治療薬の選択のレベルまで要求される。
医療・介護関連肺炎診療ガイドライン(日本呼吸器学会、2011年)22頁は「抗菌薬選択の基本的考え方」を「患者、その家族、医療チームで十分な話し合いを行い、治療方針を決定することが求められる」とする。立正佼成会附属佼成病院では抗菌薬選択のレベルでの話し合いは一切なされていない。カルテにも、その種の話し合いをしたとの記載はない。

誤嚥性肺炎に適切な対処をすることは医師の注意義務に当然含まれる。
「誤嚥の関与する肺炎を積極的に診断し、適切な抗菌薬治療を選択しないと、不十分な治療になって致死的状態に陥ったり、過剰な治療で耐性菌を増やしたりなど負の効果をもたらすことになる」(「JAID/JSC感染症治療ガイドライン」日本化学療法学会雑誌62巻1号31頁)。
「誤嚥性肺炎と診断された場合、本邦ではSBT/ABPCが最も頻用されている」(「JAID/JSC感染症治療ガイドライン」日本化学療法学会雑誌62巻1号32頁)。これはユナシンである。途中でユナシンの使用を止めた病院に問題はないか。カルテの記載から判断するならば、延命につながる全ての治療を拒否し、点滴による生命維持も好ましく思っていない長男の意向に引きずられたとすることが自然である。
投与期間は「日常臨床で最も多くの症例に投与されている7-10日間程度が妥当」(日本呼吸器学会他『医療・介護関連肺炎診療ガイドライン』日本呼吸器学会、2011年、25頁)。
立正佼成会附属佼成病院の医師は証人尋問でカルテ記載の死因は誤診で、正しい死因を院内感染と主張しており、過剰な治療を改めたと主張するかもしれない。しかし、その主張に乗るとしても院内感染で死亡したとなるため、適切な治療でなかったことは明らかである。

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