2018年3月4日日曜日

タラント氏の事件簿

『タラント氏の事件簿』は、20世紀前半のアメリカを舞台とした推理小説の短編集である。推理小説には名探偵の仕事は殺人事件を解決することであって、殺人事件を阻止することではないとの皮肉が寄せられる。殺人事件が起きてから謎解きするよりも、殺人事件を阻止する方が優秀であるが、それでは推理小説が成り立たないという構造的な問題がある。本書の「釘と鎮魂曲」も、それが該当する。ここで第一に責められるべきは警察の無能である。そこは明確であるが、タラントも全ての謎を解き終えてはいなかった。そこは明確であるが、タラントも謎解きに時間がかかったことを後悔している。

トレヴィス・タラントが探偵役で、ジェリー・フィランが視点人物というホームズとワトソンのシステムになっている。
但し、フィランはワトソンよりも良くも悪くも人間臭い。フィランは好き嫌いの激しい人物で、第一印象で相手を嫌いになることもある。しかし、タラントに対しては最初の出会いが最悪のパターンであるにも関わらず、好感を持つようになる。ここには人間の相性の不思議さがある。
また、ワトソンはホームズの助手という面があるが、タラントには日本人執事のカトーが助手になる。このカトーは日本政府のスパイとしてアメリカにいる設定である。やがて第二次世界対戦になる国際情勢を反映している。
このカトーの話し方は少しおかしい。物語内の中国人の日本語「何々アルよ」に似ている。日本人の中には外国人のたどたどしい日本語を面白がる風潮があるが、外国では逆に日本人がたどたどしいと思われることもあるだろう。自国中心ではなく、相互主義の感覚が大切である。

0 件のコメント:

コメントを投稿