2017年11月5日日曜日

ボクの針は痛くない

#エッセイ #書評 #レビュー
『ボクの針は痛くない』はハリネズミを主人公としたフォトエッセイである。本書のハリネズミは自分には針があるために周囲から嫌われていると思っていた。それから家族ができ、自己肯定に至る物語である。ハリネズミを擬人化して考えると現代日本社会からの救いの物語になる。針は何らかのコンプレックスの比喩であり、コンプレックスを持った人が周囲に作った壁を壊す物語になる。『新世紀ヱヴァンゲリヲン』テレビ版の最終回で碇シンジが自己肯定に到達したように。著者も「自分の姿をハリネズミに重ねながら」と書いている(37頁)。そのような物語としては素直に読める。
一方で著者は実際にハリネズミをペットとして飼育している。その点では動物を擬人化した架空のファンタジーではなく、読者もどうしても現実を意識してしまう。著者がハリネズミと暮らして癒されることはあるだろう。アニマルセラピーもある。飼い主の主観としては良いが、ハリネズミの主観として現実的に考えるとどうだろうか。ハリネズミの針は外敵から守るためのものである。針は痛いものである。それが生物として正しい。このように現実的に考えると突っ込みたくなる。とは言え本書は刺々しさを見せるためにタワシとハリネズミを並べた写真(4頁)を出すなどユーモラスであり、楽しめる。

0 件のコメント:

コメントを投稿