2016年6月16日木曜日

とぼとぼ亭日記

『とぼとぼ亭日記』は昭和の戦後の学生と絵描きで屋台のラーメン屋の交流を描くモデル小説である。主人公の学生はラーメン屋の人柄にひかれる。このラーメン屋は良くも悪くもアーティスト的であった。親しくなると主人公に金を無心するが、返済したことはない。借金があるという事実さえないかのように振る舞う。とんでもない人間である。主人公が金銭的に余裕があった訳ではない。反対に主人公は金を貸したために生活を切り詰めなければならなくなる。これまで親元に仕送りの催促をしたことがない人が、このために催促する羽目になる。しかし、主人公は何故か腹が立たなかったという。このような人間は文学の世界では、それなりに出てくる。社会人としてはダメでも人間的魅力がある存在は文学の世界では一つのステレオタイプになっている。しかし、何故、人間的魅力を感じたかの描写は弱い。私は社会人としてはダメでも人間的魅力があるという文学のステレオタイプがあるために、そのようなものと思って読み進めた。ここは本書が日記の抜粋となっているために省略さ
れているエピソードもあるのだろう。
後半は主人公とラーメン屋の物語からラーメン屋と別の人の物語になる。主人公とラーメン屋の直接の交流は減り、第三者からラーメン屋について語られることが多くなる。そこで語られるラーメン屋は人間としても最低である。悪徳業者の屁理屈と同じである。怒りを覚えるレベルである。
狭いサークルの中では面白い人と言われ、人気者であっても世間の評価は極悪人というリアリティーがある。

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