2015年5月22日金曜日

スリジエセンター

#医療 #書評 #レビュー #病院
海堂尊『スリジエセンター』は桜宮サーガの一作である。過去の物語である。視点人物は世良医師で、四年目の医者である。天城という高額な治療費をとるブラックジャック的な天才外科医が主役である。日本の古い体質の医療界に波乱を起こす。既得権益を維持したい江尻副病院長の交渉で要求を認めさせるシーンは笑える(197頁以下)。
過去の作品の登場人物の若い頃が描かれる。ジェネラル・ルージュの速水は新人医師であるが、この頃から規格外である。これに対して花房美和看護婦は初々しく、ハヤブサのイメージにはならない。彦根は医学生として登場する。彼の最初の考え方が分かって面白い。
腹黒タヌキの病院長は新進気鋭の講師である。本書では露骨な陰謀、追い落とし工作を展開する。バチスタ・シリーズのイメージが強いために病院長は頼れる味方と考えがちであるが、本書では感情移入できない。
その思想も金持ち優先の医療はけしからんという典型的な建前論で深みがない。既得権益を破壊しようとする天城の方が魅力的である。今風の議論では天城が新自由主義となりそうであるが、天城は都合が悪くなると武力に訴えるアングロサクソン流を嫌っている。
「私もアングロサクソンの利益至上主義にはうんざりしています。意のままにならないと駄々をこね、武力に訴え自分の主張を通す新興国の精神は、私の対極にあります」(67頁)

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