2015年3月26日木曜日

林田力書評・リケイ文芸同盟

#レビュー #BOOK #出版 #読書感想
『リケイ文芸同盟』は理系の編集者が理系であることを活かして、ミリオンセラー文芸書を出版しようと悪戦苦闘する物語である。主人公は自己をバリバリの理系人間と位置付け、文系的思考にギャップを感じているが、主人公自身が考えるほど合理主義的ではない。主人公が感じるギャップは理系と文系のギャップというよりも、市民感覚とブラック企業的体質とのギャップに近いものもある。それを理系と文系の差異で説明するならば的外れになる。また、主人公も非合理である。自主的に終電まで残業するモーレツ社員的な面がある。終電で帰宅するよりも会社の近くに泊まった方が休めるとわかっていながら、通勤電車で帰宅する。『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーのように給料分だけ働くという発想ではない。文系理系で職業観を分析することは無理なのではないだろうか。
理系文芸同盟の相棒の嵐田も理系という設定であるが、理系というよりも体育会系的な性格である。嵐田が数学に惹かれたエピソードも人文科学的と言ってもいい。本書は理系論としてはどうかと思うが、それは本書の弱点ではない。本書のタイトルが理系文芸同盟ではなく、リケイ文芸同盟となっていることには理由がある。最後まで読めば理解できるという味な仕掛けになっている。

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