2015年2月14日土曜日

林田力書評・シャープ液晶敗戦の教訓

#書評 #読書 #読書感想 #新刊
中田行彦『シャープ液晶敗戦の教訓』(実務教育出版、2015年)はシャープを中心として日本の家電業界の低迷の原因を分析し、復活の処方箋を提言した書籍である。著者はエンジニア出身であるが、消費者視点を有している。「技術研究から製品開発へ持っていくには、技術の価値を消費者(ユーザー)の価値に変換する必要がある」220頁。
日本の家電業界の低迷は垂直統合から国際水平分業へというトレンドを読み誤り、逆行したことである。国際水平分業を可能にした要素はモジュール化である。これによって生産設備を持たないファブレス企業が活躍できるようになった。これは非常に有意義な進歩である。この意義は積極的に評価したい。垂直統合の全体最適よりも水平分業の部分最適が勝る。素人考えでは全体最適が上に感じるが、神ならぬ人間が全ての現場を把握して最適解を提示することは不可能である。一部に利益があるが、一部には不利益で非効率な解の押し付けになる。これが経済学で新自由主義が隆盛した要因である。新自由主義に批判したいことはあるが、この点は押さえておきたい。
一方でモジュール化によって標準規格が重要になる。この標準規格を誰がどのように決めるかが問題になる。
シャープの盛衰は亀山工場の成功と堺工場の失敗に凝縮される。著者は堺工場建設は間違いではなかったが、過大投資であったと指摘する(165頁以下)。堺工場は亀山工場よりも巨大設備であったが、工程は亀山工場と同じで技術革新はなかった(172頁)。大艦巨砲主義に固執した日本軍と同じ過ちを繰り返している。重厚長大からの転換は高度成長が終わった時点で言われたことであるが、本質的な意味で脱却できていなかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿