2015年1月24日土曜日

林田力書評・不思議な尻尾

#本 #新刊 #魔法 #読書感想
マーガレット・マーヒー『不思議な尻尾』(東京創元社、2014年)はニュージーランドの児童文学作家による魔法ファンタジー小説である。主人公は引っ越してきたばかりの少年トム。近所の犬は尻尾を上下に振ると、周囲にいる人の願い事が実現する。このように紹介するとメルヘンチックな物語に聞こえるが、現代社会に値を下ろした物語である。主人公は母親と二人で暮らしており、現代的な家族構成である。近所には猫を蹴飛ばす悪ガキ集団もおり、皆が善人というような教育的配慮の行き届いた物語ではない。日本では児童文学に教育的要素が強くなり過ぎて、エンタメとしての児童向け作品は漫画に奪われた感がある。本書に子どもの生活に根差した児童文学の現実性を感じた。漫画と述べたが、本書からドラえもんを連想した。母親が魔法で酷い目に遭う点もドラえもんと重なる。
願い事が叶うならば無敵である。世界は自分の思うままとなりそうであるが、実現する訳がないと思いながらも、ちょっと思ったことが実現してしまうために一騒動が起きる。終盤は非常に教育的なメッセージが込められているが、結末は魔法ファンタジーになっている。
子どもは様々な疑問を大人に尋ねるが、忙しい大人は真面目に取り合わない。これは、よくある光景である。本書の冒頭でも展開されるが、母親は息子に、外に出て自分の目で確かめてなさいと言う(7頁)。上手な対応である。
主人公トムは最初に犬の魔法で非現実な願いが実現した時に驚く。驚くことは当然であるが、その反応が面白い。家に帰って、じっくり考えようとした。冒険心あるキャラクターならば、不思議な出来事に遭遇した場合、現場にとどまろうとするのではないか。トムは読書好きで内向的なところもある少年少女が感情移入できるキャラクターである。

0 件のコメント:

コメントを投稿