2014年12月31日水曜日

林田力・尊厳死の話題は禁止か

#書評 #書籍 #ノンフィクション #BOOK
本年はお世話になりました。よいお年をお迎えください。来年も宜しくお願いします。
デイヴィッド・ロスマン著、酒井忠昭訳『医療倫理の夜明け・臓器移植・延命治療・死ぬ権利をめぐって』は米国の医学ノンフィクションである。人体実験など数々の医療事件を通して医療倫理が確立されていく歴史を明らかにする。
本書の有意義な点は医療倫理の問題を人体実験から紐解いていることである。人体実験が悪であることは、ブラック企業やブラック士業が悪であることと同じくらい明白である。今日の医療倫理で議論になる問題は尊厳死であるが、人体実験の問題に立ち返れば他人の思いや都合で死なせることを尊厳死と正当化できない。本書では医者を悩ませる問題として「父親を生かしていた人工呼吸器を家族がはずし、つなぎなおそうとした病院の職員を物理的に妨害した」事件が起訴されなかったことを挙げる(360頁)。これも一部の家族の都合ではなく、患者本位で考えるべきだろう。
著者は「医療に直接関与する歴史学者」という文系と理系が峻別されがちな日本ではユニークな立場である。本書の最後で「医学教育に人文科学をとりいれることで医師たちは人間らしくなるだろう」と主張する(362頁)。著者の立場が反映された主張である。

中島みち『尊厳死に尊厳はあるか』(岩波書店)は尊厳死とされるものの恐るべき杜撰な実態を明らかにし、日本の終末期医療に真に求められているものを明らかにする新書である。本書を出版した直接の契機は富山県の射水市民病院で入院中の末期患者七人の人工呼吸器が取り外され、死亡した事件である。
尊厳死が「周りの都合で行われる安易ないのちの切り捨て」になる危険性に警鐘を鳴らしている。いわゆる尊厳死とかんがえられているものには患者の尊厳を損ない、患者を苦しめて殺すだけのものもある。この問題を放置すれば、早く死なせたいから治療を中止する者も出てくるだろう。
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