2014年7月24日木曜日

林田力書評タイタス・アウェイクス

『タイタス・アウェイクス』(創元推理文庫、2014年)はタイタス・グローンというアウトサイダーの放浪の旅を描いた書籍である。タイタスは傍観者として社会に接している。一つの場所にとどまることができない。家族を置き去りにして一人で放浪の旅に出るという冷たさを持っている。タイタスは「ひとりの個人は、どんな社会組織よりも重要」との信念を抱いている(207頁)。そのために社会組織に束縛されずにスナフキン的な放浪生活を送る。基本的にタイタスは受動的であるが、後半に入ると人助けに積極的になる。そして結末は非常に予定調和的である。一方で序盤に登場した人物の視点に立つと、「終わりよければすべてよし」というナイーブな発言はとてもできない。回り道して自分探しすることは勝手であるが、それに振り回される側はたまったものではない。
本書はファンタジー小説に分類されるが、魔法のような超自然なものはない。それでも本書の表現はファンタジー的である。
本書はマーヴィン・ピークのゴーメンガースト三部作の続編として書かれたものである。もともとピークには第四部の構想があったとされ、彼亡き後に妻のギルモアが本書を書き上げたという。林田力

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