2014年4月8日火曜日

憲法の真髄と日本の未来

#読書 渡邊和美『憲法の真髄と日本の未来・明治維新から平成世界維新へ』(今日の話題社、2013年)は保守の立場から平和憲法擁護論を展開するユニークな書籍である。一般に保守は日本国憲法を押し付け憲法とし、九条の改正を志向する。これに対して本書は昭和天皇が九条の発案者であったとし、平和憲法を擁護・尊重することが大御心にかなうと主張する。
本書の指摘は左翼的な護憲論と比べても論理が通るところがある。第一に第一章の扱いである。憲法の理念である国民主権を徹底するならば第一章は矛盾である。護憲論者は本来ならば第一章削除という会見提案をしても不思議ではない。現在の政治情勢下で天皇制廃止を唱えて改憲論の土俵に乗ることの是非は戦略的に考えることである。しかし、日本国憲法を有り難がるだけの護憲論には思想的薄さが否めない。これに対して本書は天皇を前提としており、第一章も第九条も矛盾なく存在する。
第二に押し付け憲法論である。私見は無条件降伏の結果として押し付け憲法は当然との立場である。連合国は日本を平和的な民主国家にすることを求めており、それが大日本帝国憲法では実現できない以上、憲法改正は無条件降伏に含まれており、押し付けに何も問題ない。
これに対して左翼的な護憲論は当時の日本人の中に草の根で日本国憲法と同レベルの憲法を期待する動きがあったことを根拠として、押し付け憲法論を否定する傾向が強い。この主張は当時からGHQ案を押し付けと反発した人々の存在を無視している。その立場からの改憲論が出ることへの反論にならない。本書は天皇の意思を出すことで押し付け否定になっている。

西澤亮一『海外で働こう・世界へ飛び出した日本のビジネスパーソン』(幻冬舎、2014年)は海外に進出した経営者へのインタビュー集である。多くの経営者にとって海外進出は金儲けだけではない。現地社会への貢献という熱い思いを持っている。日本で若者を搾取するブラック企業経営者に読ませたいほどである。それでも気になる点もあった。例えばフィリピンの話である。フィリピンには治安が悪い、怖いというマイナスイメージがある。この点についてフィリピンで事件に巻き込まれる日本人は圧倒的に旅行者が多いとする。これに対して駐在員は「家ではメイドさん、移動中はドライバーさんが守ってくれるなど、安心なうえに、日本では考えられないくらい快適に暮らすことができます」という(168頁以下)。これは新植民地主義にも映る。
表紙にはアジア(東アジア、南アジア、東南アジア)の地図があり、アジアを重視しているが、それにとどまらない。貸会議室のビジネスモデルがニューヨークでも革新的なサービスとして通用した話は興味深い。
著者はアングロサクソン型の株主資本主義やグローバルスタンダードの押し付けに対して、「日本人最大の強みは、相手の立場に立って考えられるところ」と指摘する(21頁)。そして多様性を踏まえ、現地の伝統的スタイルを尊重する日本流の手法が途上国のビジネスでは求められるとする。アングロサクソン型への批判は正しい。そのアンチテーゼとして多様性の立場からの異文化の理解や尊重が求められることも正しい。但し、それが日本流であるかは疑問なしとしない。日本人は同質性が強く、多様性を尊重しないとの批判もある。インタビューでも「日本人は新参者に対して冷たいところがあります」と話す人がいた(122頁)。この点で著者の主張は日本人を理想化し過ぎているように見えるが、そのような方向を目指すという観点で支持する。
日本人の特徴は経営者の話から見えてくる。会社へのロイヤルティーは民族性とは関係がなさそうである。一般にアジア人は定着率が悪いと言われるが、複数の経営者は人を大切にし、信頼関係を築けば問題ないと述べている。代わりに日本人からすると当たり前に見える美点として時間厳守がある。日本では「時間を守る概念も子どもの頃から徹底して植え付けられています」(180頁)。これに対してアジアでは「まったく悪びれることなく、大幅に遅刻してくる」(160頁)。「多くのシンガポール人は、10分程度は遅刻と思わない人が多いですが、日系企業を相手に、10分の遅刻が二度三度と続いたら信用問題に関わります」(210頁)。

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