2014年2月20日木曜日

田母神票とブラック企業

#選挙 #政治 東京都知事選挙における田母神候補の得票を問題視する人は少なくないが、過度に異常視することは正しくない。右翼と左翼は伸びる時は共に伸びる。ワイマール共和国末期もナチスと共産党が共に伸びた。田母神氏の得票は宇都宮けんじ候補健闘の裏返しである。伸びる時は共に伸びるもので、どちらが大きく伸びているかが決定的に重要である。都知事選挙の結果は健全性の表れと評価できる。
田母神票について二十代の中で割合が高いことを問題視する声もある。これに対する反省点は左翼の側が護憲に象徴されるように戦後レジームを守る運動ばかりに注力する傾向があったことである。しかし、官僚支配も土建国家も戦後レジームである。ブラック企業も貧困・格差も戦後レジームに原点がある。労働者派遣法以前から社外工という非正規労働者は存在し、社会保障制度の官民格差なども存在した。貧困層の数か増えたために貧困と格差が目立つようになっただけである。構造改革を止めて戦後レジームに戻れば解決するというものではない。
だから右翼的な戦後レジームからの脱却方向が間違っているとしても、批判者の目的が戦後レジームを維持するものであるならば、戦後レジームに苦しめられた人々にとって全く魅力がない。既得権益擁護の運動にしか見えない。
戦後レジームからの脱却自体は歓迎する人々が存在することは直視しなければならない。むしろ、宇都宮けんじ氏がブラック企業批判などによって戦後レジームからの脱却を求める層の支持を得たことを評価する。宇都宮氏が解雇特区をブラック特区と名付けたことは重要である。世代間格差に苦しむ若年層には中高年労働者への不満がある。中高年労働者が保護され過ぎているために自分達が苦しい立場に置かれているとして、解雇規制緩和に賛成する論理もある。ブラック企業に因んで解雇特区をブラック特区と名付けて批判したことは労働者全体に共通する問題として世代間対立を乗り越える効果がある。
この観点での宇都宮陣営の幸運は澤藤問題や細川問題が襲ったことである。古い左翼的な知識人の一部が細川氏を支持し、宇都宮氏を攻撃することで、宇都宮陣営の左翼臭が弱まった。戦後レジームを維持することで権威を維持する左翼に反感を抱く層から受け入れられやすくなった。
二十代の支持者は他の世代の支持とは別の面がある。田母神陣営は街頭などの選挙戦ではイメージ戦略を巧みに行った。田母神氏の日頃の言動を知らずに、それを見て、または石原慎太郎氏が支持しているという理由で支持した人もいるだろう。これは田母神氏の本質が隠されているという点で問題であるが、田母神氏の得票が右翼化の証拠とは必ずしもならない。これに対して日頃からインターネットに親しむ割合の高い二十代の田母神支持は田母神氏の日頃の言動を知った上での支持の割合が高いことになる。
二十代の支持が高いという点は社会経験の乏しさという点で仕方ない面もある。若者を使い捨てにするブラック企業がはびこっていると言っても、二十代の皆が皆、悲惨ではない。その中で相対的に恵まれている立場の人々には、自分が努力した結果と考える人も出てくる。社会経験があれば自分は恵まれていた、運が良かったという考えにも至れるが、二十代に自分の努力と成功が全てと考える人々の割合が多くなることも自然である。
この点でも宇都宮陣営がブラック企業批判などで苦しむ二十代、虐げられている二十代の側に立ったことは正しい。一方で世代的な特質を踏まえると二十代の支持が突出して高いことになりにくいことは認識した方がいい。宇都宮陣営は若者に訴求したと言うものの、その若者とは実はアラフォーという面もある。むしろ絶対数が多く、社会経験から政治意識もそれなりにあるアラフォーへの訴求はセグメントマーケティングとしては有効である。

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