2013年11月13日水曜日

『小説フランス革命XI 徳の政治』

佐藤賢一『小説フランス革命XI 徳の政治』(集英社、2013年)はロベスピエールらジャコバン派の独裁確立期を描く。左のエベール派、右のダントン派を粛清する。視点人物であり、ロベスピエールの友人であったデムーランまで処刑される状況は革命の迷走を印象付ける。

エベールはヒール的に描かれており、その処刑への感情移入は少ない。死刑の直前にエベールはロベスピエールの悪臭に気づき、笑いながらギロチンにかけられた。下品さを売りにするエベールからも臭いと評されたロベスピエールが内に抱える醜い感情が後半に明らかになる。

ロベスピエールは小説フランス革命シリーズで理想に燃える熱い人物として描かれた。しかし、独裁確立期の本巻では精彩に欠ける。サン・ジュストの操り人形になってしまったイメージである。

ダントン派の粛清もサン・ジュストが熱心に進めたものであるが、ロベスピエールの内に秘められた人間臭く俗っぽい思いが明らかになる。フランス革命シリーズでは抑制的であったが、濃厚な性意識を特徴とする著者らしさが出ている。

サン・ジュストの有名な言葉に「革命は凍りついた」というものがある。本巻では、このタイミングで発言させるかというところで出てくる。小説フランス革命シリーズも最後の一巻を残すが、後は下り坂しかない幕切れである。

著者は『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『オクシタニア』など歴史上の敗者を描きながらも、清々しさを出している(林田力「佐藤賢一と藤本ひとみ 〜フランス歴史小説から幕末物へ」日刊サイゾー2011年10月17日)。どう見てもロベスピエールに救いはなさそうであるが、どのような結末になるか注目する。
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