2013年11月11日月曜日

『ONE PIECE 72』社会性の深まり

尾田栄一郎『ONE PIECE 72』(集英社、2013年)はドレスローザ編の続きである。麦わらの一味も大所帯になっており、別行動をとることが多くなった。

各々に見せ場を作ろうとすると、平行して話を進めることになり、物語のテンポが削がれる。特にエニエスロビー編のように一対一の対決を繰り返すならば、バトルのためのバトルという人気少年マンガが陥りがちな罠にはまってしまう(林田力「『ONE PIECE 50巻』尾田栄一郎著」オーマイニュース2008年6月6日)。

これに対して今回は各自別々の行動が一つの方向につながったという点で、物語構成として見事である。ストーリー的には脱線になるルフィのトーナメント出場も空間的には本来の目的とつながっていることが明らかになる。ルフィは意図せずに問題の本質を突くキャラクターである。

ドレスローザ編の問題点は、敵であるドンキホーテ・ドフラミンゴがチンピラ・ヤンキー風の外見で迫力に欠けることである(林田力『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』「『ONE PIECE 69』脱法ハーブへの警鐘」)。最初の七武海のクロコダイルのような貫禄に欠ける。チンピラ・ヤンキーは主人公に瞬殺されるものと相場が決まっている。もしチンピラ・ヤンキーに苦戦するならば、引き延ばしと受け止められてしまう。
http://hayariki.net/home/30.htm
ところが、『ONE PIECE 72』ではドフラミンゴが海軍以上に密接に世界政府の上層部と繋がっていることが仄めかされる。さらに空白の百年につながる長い歴史的経緯・因縁があることも仄めかされる。ドフラミンゴの権力は、シャンクスや白ひげのように個人の実力のみではなく、世界政府の後ろ楯のある世襲的なものとの推測が成り立つ。これはドフラミンゴが若様と呼ばれていることとも符合する。これによってチンピラ・ヤンキー風の外見ながら、強大な敵と位置付けることに説得力が出てくる。

この巻ではドレスローザの闇の部分が明らかになる。虐げる者と虐げられる者がいる。これはココヤシ村(ナミの故郷)などと同じであるが、そこでは虐げる者は外部から来た征服者であった。これに対してドレスローザでは市民も無自覚的に虐げる側に回っている。これは現代日本の貧困問題・格差社会に通じている。連載長期化によって社会性が深まっている。

ワンピースは空島編ではパレスチナ問題、魚人島編ではヘイトスピーチを連想させる(林田力「『ONE PIECE』第65巻、排外主義者の思想に迫る」リアルライブ2012年2月9日)。直前のパンクハザード編では薬物問題を扱い、脱法ハーブ・脱法ドラッグ蔓延の社会情勢に重なる(林田力『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』「『ONE PIECE 70』依存性薬物利用者のゲスさ」)。

日本で最も人気を誇るエンタメ作品が深い社会性を有していることは喜ばしいことである(林田力『東急不動産だまし売り裁判12東急リバブル広告』「『ONE PIECE 71』ドレスローザは格差社会か」)。

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