2013年10月23日水曜日

ぶらりぶらこの恋

吉川トリコ『ぶらりぶらこの恋』(幻冬舎、2013年)は音大卒女性を主人公とした一人称小説である。帯には「恋愛小説」と銘打っているが、人生小説と呼ぶべき内容である。過去作品は少女マンガ的な要素が強かったが、純文学・私小説的な作品である。

「ぶらりぶらこ」と称しているように主人公にはスナフキン的なところがある。それ故に日本社会の常識に囚われない視点を提供する。以下の台詞は不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされた東急不動産だまし売り被害者には身につまされる。「なんでみんな、家とか買うんだろ。怖くないのかな。一生そこに縛られてしまうのに」(115頁)

帯では安定を選ぶかトキメキを選ぶかという二股をかける肉食女性的なイメージを煽っている。「折にふれ、私は二人の男をくらべて愉しんだ」。しかし、実際の内容は肉食女性的な悪女ではない。別の男性に傾斜することも十分に納得できる展開になっている。

後半は衝撃的な展開である。主人公のような地に足つかない性格は肌に合わないという人もいるだろう。本書を読み始めて自分の感性に合わないと感じたとしても、投げ出さずに読み続けることを推奨する。
http://hayariki.net/home/16.htm
「本が好き」を通して直前に読了した『時間旅行者の系譜 比類なき翠玉(エメラルド)』は恋愛が第一の女子高生が主人公であった。全人類に影響を及ぼすかもしれない秘密よりも自分の恋愛の行方の方が一大事であった。それに比べると「ぶらこ」は自分というものを持っている。誰かを好きになるよりも、まず自分がある。自我と向き合った作品である。
Poverty Business in Tokyo eBook: Hayashida Riki: Amazon.in: Kindle Store
http://www.amazon.in/dp/B00FW2UMKE

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