2013年9月15日日曜日

刑事たちの三日間v林田力wiki

アレックス・グレシアン著、谷泰子訳『刑事たちの三日間』(創元推理文庫、2013年)は、ヴィクトリア朝ロンドンを舞台とした警察小説である。スコットランド・ヤード殺人捜査課に配属されたばかりの新米警部補ウォルター・ディは刑事殺人事件の捜査を命じられる。
複数の事件が同時進行する。全てが一人の黒幕に起因するというような単純な話ではない。しかし、別々の事件の関係者が互いに接点を持っており、一つの物語としてまとまっている。
ちょうど切り裂きジャックが姿を消した頃である。切り裂きジャックを契機として、合理的理由なき猟奇殺人が続発するようになった不気味さが描かれる。一方で犯罪者側の心理も描かれることで、理解不能な異常者の犯罪というステレオタイプからも抜け出ている。
小説には重苦しい雰囲気が流れている。一つには霧の都ロンドンの天候の反映である。一つには産業革命によって生じた貧困と格差、阿片の蔓延という社会病理を直視していることによる。これは構造改革で貧困と格差が拡大し、脱法ハーブが蔓延する現代日本にも重なる。下巻に登場する救貧院の貧しい住環境は現代日本の貧困ビジネス、脱法ハウスそのものである。
私は「本が好き」を通して現代英国の警察小説『冬のフロスト』を読んだことがある。誤認逮捕を連発するトンでもない小説であったが、小説の雰囲気には明るさがあった。『刑事たちの三日間』のような暗さは英国警察小説では王道である。その中でフロスト警部シリーズに新鮮味を感じることも理解できる。

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