2013年7月19日金曜日

黒王妃v=?iso-2022-jp?B?GyRCTlMbKEI=?=田力wiki書評

佐藤賢一『黒王妃』はカトリーヌ・ドゥ・メディシィスを主人公とした歴史小説である。黒い衣装を好んで着たことから黒王妃と呼ばれた。
カトリーヌと言えば、権謀術数でフランス宮廷を支配した人物として名高い。しかし、本書では最初は平民の娘と軽視され、我慢を強いられる毎日であった。地味な王妃、日陰者の王妃、大人しい王妃とみなされていた。息子が王位を継ぎ、国母となった後も傲慢な嫁のメアリ・ステュアート(マリー・ステュアール)と対立した。メアリはエリザベス一世との対立から悲劇の女王と位置付けられることが多いが、本書では「あんな大女なんか」と扱き下ろされている(41頁)。「土台が思慮分別に欠ける女」とも評している(321頁)。
当時のフランスはユグノー戦争の最中である。カトリーヌはユグノーの弾圧者、聖バルテルミーの虐殺の主導者として悪名高い。しかし、本書ではカトリーヌは猶和政策を追求していたが、プロテスタントの増長によって弾圧せざるを得なかったとしている。後にブルボン朝の創始者となるユグノーの大物ナヴァール王アンリは田舎者で、ずんぐりむっくり、「あげくが臭かった」と描写する(384頁)。人間性に対する悪印象を臭いに置き換える設定は巧妙である。
本書は聖バルテルミーの虐殺に至る現在進行形の物語とカトリーヌの回想が交互に進行する。その中で心理的効果を狙ったファッションと思われた黒衣がカトリーヌにとって意味があるものであることが明らかになる。構成が巧みである。

0 件のコメント:

コメントを投稿