2013年7月30日火曜日

冬のフロストv林田力ブログ書評

『冬のフロスト』はイギリスのフロスト警部を主人公とした警察小説シリーズの一作である。だらしないロートル刑事が、行き当たりばったりの捜査で事件を解決するという推理小説では異色の部類に入る。本書でもフロスト警部のはったりで真犯人が自供してしまうケースが複数ある。
フロストの手口は被疑者の人権尊重の点で問題があるが、それを抑制する仕組みがイギリスの警察にはある。取り調べは全て録音されている。被疑者には弁護士を呼ぶ権利が保証されている。また、フロストの同僚がフロストの強引な取り調べを注意するなど、健全な人権感覚がある。このような背景があるからフロスト警部の逸脱も読めるものになる。
警察官の犯罪を揉み消すなど警察組織の腐敗が描かれる。フロストは経費を不正請求している。
「おれが同じようなやばい立場に立たされたら、同僚諸君には徹頭徹尾、嘘をつきまくってかばってくれることを期待する。」上巻328頁。
「取り調べの際のやりとりが逐一、録音されている」上巻336頁
日本の警察の腐敗を描いた『ポチの告白』と同じである。一方で本書と『ポチの告白』を分かつものはフロスト警部が上司のマレット署長に反抗的なところである。ここが平目ばかりの日本の警官を描いた『ポチの告白』とは異なる。フロスト警部はマレット署長の影口を叩くだけでなく、面前でも反抗的である。これは清々しい。

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