2013年6月9日日曜日

フォット一息

恒川憲一『ミスターフィギュアのフォット、一息』(セルバ出版、2013年)はフィギュアの写真集である。貴重なフィギュアを撮影するというものではなく、被写体は常に同じフィギュア、自分そっくりのフィギュアである。そのフィギュアを面白いシーンで写したものである。何気ないシーンでもコメントと合わせることで面白くなる。駄洒落も多く、ユーモラスな写真集である。例えばイチゴと一緒に写っている写真には「一期一会」とのコメントが付されている(1頁)。
個人的に面白いと感じた写真は「敷居が高い」である(56頁)。5センチの敷居の前に5センチのフィギュアを置いたためにフィギュアから見れば高い壁になる。普通の人にとっては何ともないものでも、他の人にとっては、ものすごく敷居が高くなる。バリアフリーやユニバーサルデザインにも通じる含蓄がある。
現代日本でエッセイ的な作品を出す場合、何らかの形で東日本大震災に触れるものが多い。本書では「永遠に語れ陸前高田一本松」が相当する(80頁)。フィギュアが陸前高田一本松を眺めている写真である。この写真のフィギュアは濡れており、水滴が写っているという芸の細かさである。単に遠くから頑張れと言うのではなく、津波被害を受けた被災者と同じ目線に立とうとしている。被災者の苦しみに寄り添う姿勢に意味がある。
ここからは少し社会性のある写真が続く。学生運動(81頁)や平和(83、84頁)についての写真もあり、世代を感じさせる。著者は自己をビジネスマンと規定しており、それほど政治性が強い人物には見えない。それでも世代的経験というものが強烈であることが分かる。この点は著者よりも若い世代とはギャップのあるところである。

0 件のコメント:

コメントを投稿