2013年5月6日月曜日

冬の生け贄v林田力書評

モンス・カッレントフト著、久山葉子訳『冬の生贄』はスウェーデンのミステリー小説である。舞台はリンショーピン市という地方都市である。主人公モーリン・フォッシュは女性刑事である。雪野原の木の枝に血だらけの死体がぶら下がっていたことが事件の始まりである。極寒の北欧の描写が具体的で、日本とは異なる風土の物語であると実感できる。死体と思われる人物のモノローグが挿入されており、幻想的である。
本書には外国からの移民、職探し中の独身女性、要介護者の妻を持つ夫など様々な人々が登場する。福祉国家スウェーデンも悩みのない楽園ではないことが分かる。それでも貧困ビジネスやブラック企業が横行する日本と異なり、生活ができていることが羨ましい。
小説の醍醐味は与えられる情報が活字のみであることである。読者は文章から登場人物のイメージを想像する。これはビィジュアル面だけでなく、登場人物が自分にとって好感を抱ける人物か、反感を抱く人物かという想像も含まれる。その想像は十人十色であり、だからこそ小説のドラマ化やアニメ化で新鮮な驚きを感じたり、失望したりする。
本書では、ある人物の実像に迫る物語であるが、その人物のイメージが中々固まらなかった。デブで、周囲の人から臭いと思われている。それを裏付ける食生活でもある。不幸な生い立ちであることを考慮しても、彼を爪弾きにした多くの住民と同じく、好感を抱けない。一方で彼は優しさ溢れるモノローグを語り、作中では不幸な生育環境と孤独が強調され、同情を誘おうとする。
度を越えた肥満は自己管理のできない失格者という考えもある中で生活保護で暮らしながら肥満体になる人物には好感が持てない。生活保護受給者を怠け者とする見方がある。生存権は人権であり、生活保護バッシングに反対する。必要な人が生活保護を受給でき、ゼロゼロ物件などの貧困ビジネスが存在しない福祉国家のスウェーデンを素晴らしいと考える。それでも生活保護を受給して肥満になる彼のような人物がいるならば生活保護バッシングが起きることも理解できる。

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