2013年5月19日日曜日

貧困都政

永尾俊彦『貧困都政・日本一豊かな自治体の現実』(岩波書店2011年)は貧困と格差が蔓延した東京都政の寒い実態に迫ったルポタージュである。冒頭では貧困ビジネスを取り上げる。貧困ビジネスと言えば貧困者を搾取する極悪非道の連中というイメージがある。この理解は一つの真実である。現実に石原都政でも宅建業法違反で業務停止処分を受けた悪質なゼロゼロ物件業者は存在した。これに対して本書では貧困ビジネスが生まれる背景である行政の責任放棄にメスを入れる。
貧困ビジネスには貧困者を食い物にして暴利を貪るとイメージがある。これに対して本書は「赤字か黒字かの境界線上をさまよっていたようで、少なくともボロもうけしていた形跡はない」とする(20頁)。ここに貧困ビジネスの救いがたい実態がある。貧困ビジネス自体が赤字か黒字かというギリギリのところにあるために、貧困者を劣悪なゼロゼロ物件に住まわせるという非人道的なことを平然とする。貧困ビジネスは貧すれば鈍す、である。
そして、この事実は貧困ビジネスとの闘いが不毛でないことを示している。貧困ビジネスは資金が続かなければ破綻するからである。現実に東京都から業務停止処分を受けたゼロゼロ物件業者は姑息にも名前を変えて営業を続けたが、それから一年で消滅した。また名前を変えて新たな営業を始める危険はあるが、貧困ビジネスへの批判を緩めてはならない。

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