2013年5月18日土曜日

迷走パズル

『迷走パズル』はアメリカのミステリーで、パズルシリーズの第一作目である。主人公は演劇プロデューサーであったピーター・ダルース。妻を亡くしてアルコール中毒になり、精神病院に入院して治療中である。そこで殺人事件に巻き込まれる。
精神病院が舞台となっている点がユニークである。主人公達は殺人を警告する声を聞く。それが精神病患者の妄想か、実在する声なのか、謎が深まる。
林田力はパズルシリーズの人形パズルから先に読んだことをお断りしておく。「本が好き」で人形パズルを読み、興味を覚えて第一作目を読むことになった。迷走パズルと人形パズルは大きく異なる作品である。主人公の立場が異なる。迷走パズルではアルコール中毒の入院患者であったピーターは人形パズルでは立派な海軍将校になっている。人形パズルでは活躍するアイリスは迷走パズルでは受け身のままである。主人公は探偵的に振る舞うが、真相の説明者が別にいる点は両者で共通する。
迷走パズルの出版時は禁酒法制定とも遠くなく、ワスプ的な倫理観が高揚した時代であった。その時代にアルコール中毒患者を主人公とすることへの是非はあるだろう。現代日本で脱法ハーブ中毒者を主人公にするようなものである。パズルシリーズでは『人形パズル』でも、どうしようもない酔っぱらいを登場させている。せめてもの救いは主人公のアルコール中毒設定は過去の設定であり、『迷走パズル』の最初から主人公は正常であり、アルコール中毒らしさの描写はないことである。不幸に直面したからアルコール中毒に陥ったというだけで、アルコール中毒っぽさはない。特殊日本的精神論やヤンキー的な気合主義、自己責任論で頑張ることを強制するのではなく、反貧困のセーフティネットで支えることが大切であると感じた。

0 件のコメント:

コメントを投稿