2013年5月12日日曜日

『絶園のテンペスト』林田力ブログ書評

城平京・原作、左有秀・構成、彩崎廉・作画『絶園のテンペスト』(ガンガンコミックス)はファンタジー漫画である。復讐と魔法をめぐる、時間と空間を越えた戦いを描く。『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)にて2009年8月号から連載を開始した。
タイトルに『テンペスト』とあるようにシェイクスピアにインスパイアされている。冒頭には『ハムレット』の台詞「ああ、なんと呪われた因果か、それを直すために生れついたとは」が引用されている。
魔法を使ったバトル漫画であるが、人生観・世界観・価値観の異なるものによる人間ドラマ重視の作品である。巻き込まれ型の主人公、高飛車なヒロイン、暴走気味の友人と一見すると典型的なパターンに沿っている。しかし、主人公は巻き込まれるだけの存在ではなかった。友人に言えない秘密を持っている。それが物語に新しさを与えている。
主人公達の個人的な関心と、世界的な危機の物語が併存し、バランスが取れている。第1巻のラストでは主人公側の前提の誤りを示唆する内容になっており、続きが気になる終わり方になった。
第2巻では敵との戦いが勃発する。政府も本格的に動き出す。この手の物語は日常の中に非日常を侵食させることに魅力がある。社会の大勢は日常の枠組みを維持させることが物語のリアリティを保つ。日常を破壊すると収拾がつかなくなりがちである。そのために少しずつ話を進める形になりがちであるが、話が間延びして読者の興味を維持できないというデメリットがある。第2巻で話を動かした展開の早さを支持したい。
第7巻では主人公の秘密が公式に露見する。意外とあっけなく解決した。はじまりの樹と絶園の樹の仮説も説明される。あまりに進んだ科学は魔法に見えるとの定理に納得した。現代の科学で分かっていることを全てとするような偏狭な科学信奉者は科学からも離れている(林田力「科学信奉者への反感」PJニュース2010年11月13日)。
第8巻で遂に不破愛花の死の真相が明かされる。あまりに衝撃的な真相であった。真相を知った吉野や真広の冷静さに、良くも悪くもキャラクターとしての強靭さがある。真相を知って怒り、泣き叫ばないことの是非については意見が分かれるが、普通とは異なるキャラクターを描くことには成功した。
一方で葉風の反応は凡人的である。物語の序盤では普通の少年・吉野が奇天烈な少女・葉風に巻き込まれるというオーソドックスなパターンと思わせながら、主人公の強烈な個性を印象付ける。タイムスリッパーが過去を変えるのではなく、タイムスリッパーの過去の言動が現在を作っているという筋書きも練られている。
はじまりの樹に対しては最終試験という新たな説が提示される。この考え方に立つならば世論の大勢に反し、それを出し抜く形で突破しようという主人公達の方針には疑問が残る。結果オーライや終わりよければ全てよし的な帰結は最終試験の趣旨に反している。そのようなスタンスは物語を積み上げてきた過程を嘲笑する自己否定になる。クライマックスに向けて、さらなるどんでん返しがあるか、注目したい。
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