2013年4月16日火曜日

『活断層』開発は百害あって一利なし

堺屋太一『活断層』(アメーバブックス、2006年)は離島の石油備蓄基地建設反対運動に翻弄される事業者側従業員を描いた小説である。一般に住民反対運動は善でデベロッパーは悪という価値基準がある。これは東急不動産だまし売り被害者である『東急不動産だまし売り裁判』著者にとっては明白すぎるほど明白である。これに対して本書はデベロッパー側の人間を主人公として、反対運動側を不気味に描く。

それでも反対運動に小気味良さを覚える。村人は石油基地建設で地元は何のメリットも受けていないと主張する。工事によってダンプカーが走り回り、騒音被害が生じ、安全な生活が脅かされる。石油基地が大事故でも起こしたら、銭金の問題ではない。これは原発推進派に聞かせたい言葉である。

より重要な点は一般に開発の恩恵とされていることも不利益と受け止めていることである。建設工事では雇用が生み出されたが、それはサトウキビ畑の働き手が奪われることを意味し、地域にはマイナスである。外部から来た労働者は地元商店で食品などを購入するが、それは商品の品薄による物価の上昇を意味し、地元消費者の生活を苦しめる。現実の日本社会は目先の経済的利益に釣られて乱開発を受け入れてきた。だからこそ『活断層』の村人の論理には輝きがある。開発は地域に百害あって一利なしである。
http://www.hayariki.net/tokyu/4.htm
『活断層』の主人公は開発を進める事業者側の従業員である。彼は誠実に地元の声を聞こうとする人物として描かれる。これは二子玉川ライズなど現実の開発紛争とは大きく異なる(林田力『二子玉川ライズ反対運動1』Amazon Kindle)。それでも開発推進者は本当の意味で地元に向き合ってはいない。著者も「彼の努力はエリートの努力の域を出ていなったのではないだろうか」と振り返っている(421頁)。その地元への配慮には独り善がりな虚しさが漂っている。
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http://www.amazon.com/dp/B00CCEHB9U

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