2013年3月27日水曜日

大統領候補の犯罪

ダグラス・カイカー著、後藤安彦訳『大統領候補の犯罪』(新潮文庫)は現代のアメリカ合衆国を舞台としたミステリー小説である。主人公はフリーのジャーナリストである。大統領候補の記事を書く計画があったが、女性の水死事件に遭遇する。この事件は大統領候補と関係があるらしい。
本書にはワシントンの政界、社交界の裏話的な話題が登場する。ワシントンの社交界の旧家について「穴居生活の時代からアメリカに住み着いている」との表現がある(201頁)。移民の国とされるアメリカでも、このような表現があることが興味深い。
ワシントン社交界の生活も描かれる。「みんな同じダンスの個人教授に通い、同じワルツ・グループに所属してる」「子どもたちをみんな同じ私立の学校に通わせてる」「礼拝にいく教会までが同じ」(204頁)。しかも、そこはセレブのボスの独裁社会である。「どこで衣類を買うかも、ヘア・スタイルを誰に整えさせるかも、どこで昼食を食べるかも、みんな彼女が決める」(205頁)。
上流階級の生活は何と貧しく下らないものかと心底から感じた。「立って半畳、寝て一畳」の境地は決して痩せ我慢ではない。
ミステリーとしては大統領候補が犯罪者であることを示唆するタイトルであり、ネタバレ感がある。真相が予測できるために前半の展開の遅さはもどかしい。しかし、後半で意外な方向転換が行われて、『大統領候補の犯罪』というタイトルが読者をミスリーディングさせるものであったのかという驚きを与える。さらにラストで新たな事実が加わり、「そういう意味だったのか」とタイトルに納得させられた。

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