2013年3月18日月曜日

『日本のすがた2013』林田力ブログ書評

矢野恒太記念会『日本のすがた2013』は統計データに基づく社会科資料集である。小学校高学年から中学生向きであるが、文字通り日本の姿を知る上で大人にも有益である。最新の統計データに基づいており、自分が学校で習った頃との相違も分かる。

たとえば、かつて日本の代表的な工業地帯は四大工業地帯と称していた。京浜、中京、阪神、北九州である。しかし、今では北九州が地盤沈下し、三大工業地帯となっている。官営八幡製鉄所など国策としての殖産興業は過去の歴史になっている。代わって全国各地に新しい工業地帯が誕生している。たとえば茨城県北東部と福島県南東部にまたがる常磐工業地帯などである(124頁)。福島第一原発事故は農業だけでなく、日本の工業にも打撃を与える。福島の復興は日本にとって重要である。

住宅に関する統計では空き家が798万戸もある。これは住宅総数の13・9%にもなる(197頁)。この状況で新築マンションを新たに建設することは社会的には大きな無駄である。この主張は二子玉川ライズ反対運動で主張されている(林田力『二子玉川ライズ反対運動2』「二子玉川ライズは少子高齢化社会に不適合」)。これは統計データで裏打ちされた。

また、持ち家と賃貸の比率も興味深い。1968年から2008年まで持ち家と賃貸の比率は変わっていない。国は住宅ローン減税や固定資産税の減免など持ち家ばかりを優遇する住宅政策を採用しているが、それで国民の住環境が改善された実感は乏しい。分譲住宅の購入動機には「家賃は高い」「高齢になると家を借りにくくなる」という消極的な理由が一定の割合を占めており、外的要因で分譲に誘導されてしまっている面がある。
http://www.hayariki.net/eco/9.htm
廉価で良質な賃貸住宅の供給こそ住宅政策で求められる(林田力「「もめタネ研」で東急不動産だまし売り裁判から住宅政策を検討」JANJAN 2010年2月9日)。統計上も持ち家は増えておらず、持ち家推進が全国民のニーズに合致していない。持ち家取得推進政策は不動産業者を儲けさせるだけで、国民は住宅ローンに縛られる(林田力「住宅購入促進は景気 回復に役立つか」PJニュース2010年3月15日)。統計データは住宅政策見直しの資料になる。

最後に『日本のすがた2013』の章立てについて論評する。『日本のすがた2013』は第3章「農林水産業」、第4章「日本の工業」など日本の産業について述べた後で第7章「国民の生活」を説明する。日本の政治は産業界の要求が優先され、国民の生活が第一になっていないと批判されている。社会科資料集でも国民の生活が第一になっていない。日本社会の意識転換は非常に骨の折れることであると実感した。

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