2013年2月24日日曜日

シドウ

『シドウ』はアングラ的な料理人を主人公とした作品である。社会悪への復讐を請け負い、復讐相手に極上の料理を食べさせた後で奈落の底に突き落とす。料理漫画としては風変わりであるが、復讐請け負いというプロットは珍しいものではない。復讐の動機や結果も、よくある話になってしまう危険もある。どこまでストーリーに凄みを見せられるかが勝負どころである。
その意味で地上げ不動産業者社長に復讐する話は秀逸である。不動産業者の悪辣な地上げによって一家は生業を失い、自殺を余儀なくされた。不動産業者の開発や追い出しによって廃業を余儀なくされる個人業者は多い。東京都世田谷区玉川の再開発・二子玉川ライズが一例である(林田力『二子玉川ライズ反対運動7』)。品川区の東急大井町線高架下でも東急電鉄の一方的な追い出しによって廃業する商店が続出している(林田力『東急大井町線高架下立ち退き』)。
物語では不動産業者社長は地上げで自殺させた過去を振り返るが、「何も自殺しなくても」と他人事のような感想を述べる。他者の痛みを理解しない屑である。これは東急不動産だまし売り裁判での東急リバブル東急不動産の対応とも共通する(林田力『東急不動産だまし売り裁判こうして勝った』)。最近ではイジメや体罰の加害者側の発想と重なる。
その意味で加害者側の再出発という加害者側に都合のよい、ありきたりな展開に見せかけながら、奈落の底に突き落とすドンデン返しは秀逸である。悪徳不動産業者は不動産不況で痛手を受けているが、それだけでは被害者住民の被害感情は癒されない。この物語はカタルシスになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿