2013年1月5日土曜日

影の王国v林田力Facebook書評

『影の王国』は中世風の異世界のウィールド王国を舞台としたファンタジー小説である。五神教シリーズの一冊であるが、他の作品とはキャラクターや場所を共有していない。五神教とは五つの神を信仰する宗教である。森林地帯のウィールドは自然信仰であったが、数百年前にダルサカのアウダル大王に征服され、五神教信仰が強制された。その後、ダルサカの内紛でウィールドは独立を果たすが、五神教は根を下ろし、伝統信仰は排斥された。
主人公は狼の精霊を宿す剣士イングレイである。狼憑きとして排除される立場にあったが、ヘトワル卿に拾われた。ヘトワル卿の命令により、侍女に殺害された第三王子の遺体回収から物語は始まる。
上位の者にも神すらも反論するイングレイが小気味良い。黙って命令に盲従するロボットではない。日本ではブラック企業が社会問題になっている。ブラック企業の従業員は犠牲者であり、被害者であるが、ブラック企業に潰されないためにはイングレイのような反骨精神が必要である。
ウィールドで五神教が浸透し、伝統的な森の魔術が排斥され、排斥されながらも部分的に残存する状況は、ゲルマン民族などのキリスト教化を連想する。また、神を至高の存在としながらも、その神ですら人間の自由意思をおかすことはできず、自由意思を尊重する存在として描かれる。これは人間が悪を犯すことを神が止めないことについてのキリスト教神学の説明と重なる。架空の世界の物語であるが、キリスト教世界を土台にしている。林田力wiki
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