2013年1月5日土曜日

青山剛昌『名探偵コナン 78』林田力wiki書評

青山剛昌『名探偵コナン 78』はオリエント急行殺人事件をモチーフにした「ベルツリー急行殺人事件」がメインである。他に「消えた密室の鍵事件」「赤面の人魚事件」を収録する。

ベルツリー急行殺人事件では灰原哀を狙う黒の組織も動き出し、緊迫した内容になる。ここで遂にバーボンの正体が判明する。バーボン候補だった残り二人の正体も従前の推測を強めるものであった。

沖矢昴、世良真純、安室透の三人は比較的最近になって登場した謎めいたキャラクターである。三人は極めて高度な推理能力を持ち、コナンや灰原、毛利小五郎に並々ならぬ関心を抱いている。この三人の一人が黒の組織から送り込まれたバーボンであると物語では仄めかされている。

バーボン候補の三人には『機動戦士ガンダム』のキャラクター名が使われている。ジオンのキャラクターに因んだ名前のキャラクターが主人公サイド、連邦のキャラクターに因んだ名前のキャラクターが敵という点に味がある。ガンダムでは連邦が主人公サイドであるが、連邦は無能と腐敗と圧制の象徴であり、ジオンに感情移入するファンも多い。名探偵コナンでのキャラクター設定はガンダムの世界観を理解している。
http://www.hayariki.net/cul/5.htm
バーボンの正体が明らかになったものの、バーボンを追い払うことにはならず、コナンはバーボンを意識しなければならないため、むしろ「眠りの小五郎」の推理ショーがやりにくくなった。「眠りの小五郎」の推理ショーができないならばコナンは子どもの思いつき的な言動で周囲の大人を誘導する。

この設定は「名探偵コナン」を推理物として優れたものにする。推理物では真相が明らかになるのは最後でなければならない。故に「金田一少年の事件簿」のように最後の段階で「謎はすべて解けた」とするのも推理物の一つの構成である。

一方で優秀な探偵ならば、早い段階で事件の真相を把握していてもおかしくない。実際、「シャーロック・ホームズ」は、その要素が強い。ホームズは早い段階で真相を解明しているが、読者には真相が最後まで明かされない。これは物語がワトソンの視点で語られているためである。ワトソンが質問しても、ホームズは断片的にしかヒントを提供せず、はぐらかしてしまう。

この点はコナンも似ている。いち早く真相に気付いても、自分の推理を披露できない。そのため、周りの大人達を部分的に誘導することしかできない。これによって、読者も中々真相にたどり着けず、最後まで引っ張られる。自分が探偵であることを隠さなければならないという設定は物語としての面白さだけでなく、推理物としても優れた枠組みになる。(林田力「【アニメ】名探偵 コナン、推理力で大人を誘導」ツカサネット新聞2009年2月24日)

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