2012年12月9日日曜日

『HUNTER×HUNTER 31』書評 林田力 wiki

冨樫義博『HUNTER×HUNTER』は『週刊少年ジャンプ』の連載マンガの単行本である。架空の世界を舞台として、少年ゴン・フリークスらハンターの冒険を描く。『HUNTER×HUNTER 30』ではキメラ=アント編が完結する。

バトル漫画は主人公が敵キャラクターを倒す展開であるが、キメラ=アント編は異色である。人間の対極に位置すると思われたキメラ=アントの王の最後をヒューマニズムでまとめ、人間側の攻撃に人間の残酷さを描く。爆発後も体を蝕む薔薇の毒は放射能の内部被爆を連想させ、強烈な現代文明批判にもなっている。

『HUNTER×HUNTER』は下書き同然の絵が掲載され、定期的に休載することでも話題の作品である。キメラ=アント編完結で一休みに入ると予想されたが、そのまま新章に突入し、これまでと比べると相対的に長期の連載が続いている。『HUNTER×HUNTER』の度々の休載は作者の怠け癖と見られ、冨樫病という不名誉な言葉も生まれたが、キメラ=アント編は作者にとっても難しいテーマであったと言える。

新章の第319話「抽選」では十二支をモチーフにした幹部キャラクターが登場した。彼らは表紙にも後姿が描かれている。十二支をモチーフとする点は同じジャンプ作品の桐山光侍『NINKU -忍空-』と同じであり、大半のキャラクターのビジュアルが動物と関連付けられている点は尾田栄一郎の『ONE PIECE』の王下七武海に類似する。

しかも、幹部キャラの登場シーンは「どべ〜ん」の擬音付きで、これも『ONE PIECE』の「どーん」を連想させる。さらにストーリーは自己の過去作品の『幽遊白書』の魔界統一トーナメント編を想起させる展開になった。
http://www.hayariki.net/5/7.htm
一方で幹部キャラが動物と関連付けられる理由は、コードネームの付与者に心酔するあまり、自らを干支に因んだコードネームに似せようと自発的に努力した結果と説明する。ここには「なるほど」と思わせるオリジナリティがある。

『HUNTER×HUNTER 31』は前巻で完結したキメラ=アント編とは大きく変わった。キルアの妹のアルカがキーパーソンになる。キルアの妹を守ろうとする覚悟が光る。アルカの能力説明が複雑で頭を使う漫画である。

並行してハンター協会の会長選挙が進行する。腹黒い悪役と予想された副会長のパリストンであったが、フェアに戦っている。自分の不利になるルールを提言し、障害を楽しんでいる節がある。そこはネテロ会長に似ていると評されている。「相手の弱いところをセットで叩くから報復」という卑怯者とは大違いである。(林田力)

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