2012年11月19日月曜日

黒川博行『繚乱』書評 林田力 wiki

黒川博行『繚乱』は不祥事で大坂府警を退職した元警察官(暴力団対策の刑事)を主人公とした小説である。競売屋の調査員になり、倒産寸前のパチンコ屋を食い物にする悪に迫る。

『繚乱』にはウンザリするほどの警察の腐敗、個人情報濫用、業者の癒着が登場する。敵対者側の警察OBは上から下まで悪が揃っている。小物は小物なりに卑劣な悪である。それは現実の警察を下敷きにしたものでリアリティがある。警察を取り巻く闇の深さが理解できる小説である。

主人公も正義ではない。警察の人脈を利用して警察の保有する個人情報を入手し、自分達の調査に役立てる。個人情報不正利用に対して主人公には罪悪感は皆無である。この種の犯罪も現実に起きている。警察不祥事では不祥事そのものの悪質さに加えて警察の隠蔽体質も問題になる。警察組織は仲間内でかばいあい、臭いものに蓋をする。

警察内の監察組織も本来の目的を果たしていない。時の上層部が都合の悪い相手の弱みを握り、相手を失脚させるために機能しているだけである。閉鎖的な組織内の人脈が腐敗の温床であり、外部の人間を入れなければ警察改革は不可能であると再認識させられる。
http://www.hayariki.net/7/26.htm
『繚乱』の特徴は勧善懲悪ではないことである。主人公が悪でも勧善懲悪的なカタルシスとは両立する。純粋には正義とは言えない立場の主人公が巨悪を滅ぼすという筋書きもあるためである(林田力「『白竜LEGEND』第16巻、医療過誤追及でカタルシス」リアルライブ2011年2月 12日)。巨悪を滅ぼすためには主人公側も悪事に手を染める必要があるとの考えも一理ある。しかし、『繚乱』は異なる。小悪が巨悪から掠めとる程度である。そこに警察物のリアリズムがある。

正義ではない主人公を描いた『繚乱』にとってラストは印象的である。因果応報の世界観を実現した。ここでは名前も紹介されないヤクザが重要な役割を果たす。このヤクザの行動は全体的な利害関係からは無意味な行動である。しかし、ヤクザ個人の意地を通した行動である。警察の腐敗を見せつけられた後であるために名もないヤクザの行動に一種の爽快感があり、悲劇的な結末にも妙な納得感がある。(林田力)

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