2012年11月4日日曜日

『SOUL 覇 第2章』書評 林田力 wiki

武論尊原作、池上遼一画『SOUL 覇 第2章』(小学館、2012年)は劉備を倭人とする異色の三国志である。元々は『覇-LORD-』という名前の作品であったが、倭軍の上陸という新展開を迎えるにあたってタイトルを一新した。

『覇-LORD-』の世界では劉備は残忍な人間であり、倭人の燎宇に殺害され、この燎宇が劉備を名乗っている。関羽や張飛と桃園の誓いをする点は三国志と同じであるが、この二人は横山光輝の『三国志』で描かれたような圧倒的な強さはない。曹操が後漢の献帝を殺害してしまうという史実を逸脱した展開になった。

『SOUL 覇 第2章』は劉備が倭国から大軍を呼び寄せ、中華を女王卑弥呼に服属させようとするところから始まる。実際のところは当時の倭国は中国から鏡をもらってキャッキャと喜んでいたレベルであり、中華に大軍を派兵するほどの国力はない。さらに呉がローマの剣闘士奴隷を率いており、国際色豊かである。漢民族中心の中華思想の歴史観とは異なるフィクションを提示する。
http://www.hayariki.net/5/63.htm
他にも趙雲が女性で、呉がキリスト教を信奉するなどユニークな設定が目白押しである。関羽と張飛が劉備から離反するなど三国志の内容からも大きく逸脱している。諸葛亮も劉備とは独自の立場で行動している。三国志で活躍する人物が、あっけなく退場するという驚きの展開も用意されている。

『SOUL 覇 第2章 2』は赤壁の戦いに突入する。諸葛孔明が劉備を殺害しようとするなど、史実から乖離した展開が続いている。その中で印象的なシーンは安易に寝返りを約束する裏切者を切り捨てるエピソードである。「昨日の敵は今日の友」「終わりよければ全てよし」というナイーブな筋書きはつまらない(林田力「【コミック】過去の敵への態度に注目『ONE PIECE 第51巻』」ツカサネット新聞2008年9月17日)。人間の精神の熱さを持っている内容である。(林田力)

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