2012年11月13日火曜日

水上勉『沢庵』

水上勉『沢庵』は沢庵和尚の一代記である。宮本武蔵や徳川家光らとの絡みで有名な存在であるが、個人としては必ずしも知られていない。その沢庵を本書は史料に基づいて生い立ちから詳述する。
『沢庵』には「大徳寺は茶道のサロン」との表現がある(27頁)。大徳寺と茶道の関係の深さは本書にも表れている。参禅した茶人を「よくお寺に行ったりして」と遊んでいるかのように非難した人物がいるが、茶道の研鑽について無知であることを暴露している。
本書は桃山時代から江戸時代初期に至る政治史の中で沢庵の人生を物語る。この時代は幕藩体制が強固になる過程で多数の人々が「長い者には巻かれろ」で権力に迎合した時代であった。仏教も支配体制に組み込まれ、葬式仏教に堕落した。その中で沢庵の権力に迎合せず、反骨精神と清貧生活を貫く姿勢は清々しい。東急不動産だまし売りと闘った立場として大いに共感する(林田力『東急不動産だまし売り裁判こうして勝った』)。
沢庵は紫衣事件で幕府に抗議して流刑に処せられた人物として知られる。沢庵の権力に媚びない姿勢は紫衣事件以前から一貫していたことを本書は描いている。
紫衣事件は江戸幕府の横暴である一方で、既得権擁護者の抗議というネガティブな評価も成り立つ。現実に抗議活動が盛り上がらなかった背景には腰砕けになった僧侶もいたためである。しかし、沢庵は既得権擁護者ではない。地位を求めず、自ら清貧生活を貫いた。それを丁寧に描本書はいている。
本書は大徳寺についても詳述する。室町幕府の庇護を受けた五山に対して大徳寺を後醍醐天皇に由来する朝廷ゆかりの寺と位置付ける。紫衣事件で朝廷と幕府が対立した背景が一層理解できる。林田力
http://hayariki.net/

0 件のコメント:

コメントを投稿