2012年10月3日水曜日

濡れた魚v林田力wiki書評

『濡れた魚』は戦間期のワイマール共和国ベルリンを舞台としたミステリーである。主人公はベルリン警視庁風紀課刑事である。
殺人事件あり、ロマンスあり、警察組織内部のセクショナリズムあり、主人公の過去あり、社会情勢ありと様々な要素が詰め込まれている。特に社会情勢は深く描写されている。一般にワイマール共和国は当時の世界で最も民主的な共和国と評価される。そこからナチス独裁が誕生したことは民主主義のパラドックスと受け止められる。しかし、実際はワイマール共和国の民主主義に限界があったからこそナチスの独裁を許した。本書で描かれた社会民主党政権による共産党デモ弾圧や退役軍人のドイツ革命への不満は後にナチス独裁を許したワイマール共和国ドイツの弱さを物語る。
本書は文庫本上下巻になっている。多くのミステリーと同様に上巻だけでは事件の全貌は明らかにされない。それでもタイトル「濡れた魚」の意味や陰謀の目的が明らかになり、物語に引き付けられる。ミステリーの中にはラストで全ての伏線を結び付けようとするあまり、序盤中盤では話の方向性が見えず、読むことが苦痛になる作品もある。ほとんど捜査に進展がないにも関わらず、適度に謎を明らかにする『濡れた魚』の筋書きは巧みである。林田力
http://hayariki.net/

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