2012年9月29日土曜日

場のまちづくりの理論v林田力Facebook書評

岩見良太郎『場のまちづくりの理論・現代都市計画批判』は都市計画の研究者による研究書である。『場』についての哲学的な文章が続くために表面的には難解であるが、主張は明快である。著者は二子玉川ライズ訴訟で意見書を提出するなど活動的な研究者である。
場とは単なる場所ではなく、街は単なる建物の集合を意味しない。人々の生活や交流の場である。縁のある場ということに意味がある。しかしながら、現代日本の都市計画は開発業者の金儲けのために場を破壊する方向に利用されている。その典型例として東京都世田谷区の二子玉川東地区市街地再開発(二子玉川ライズ)などを取り上げる。
場を破壊する行政や開発業者に対し、場を守り、発展させる活動が開発反対の住民運動である。反対運動に対しては判で押したように「反対のための反対で生産的ではない」とのステレオタイプな批判が出てくる。これに対して本書は反対運動に積極的な意味を見いだす。住民が主体的に活動する反対運動が地域の縁を強め、場を活性化させる。
既存の生活を場や縁という価値で理論化する本書の視点は住民運動に希望を与える。開発推進派は開発による経済発展というドグマを押し付けてくる。このドグマは不動産不況の中でメッキが剥がれてきているが、まだまだ強固である。反対運動にもドグマの前提を無意識的に受け入れてしまい、自然保護という対抗価値に頼る傾向がある。開発による経済利益よりも自然に価値があるという思想は正しい。しかし、都市住民に全面的に受け入れられるかは別問題である。逆に木造密集地域を再開発して超高層ビルを建設し、オープンスペースを緑化するという開発推進派の論理に悪用されかねない。この点で生活の場や縁に価値を置く本書の指摘は重要である。林田力

0 件のコメント:

コメントを投稿