2012年9月8日土曜日

ナニワ・モンスター

海堂尊『ナニワ・モンスター』はパンデミック騒動を風刺した医療小説である。普通の風邪と大差ない弱毒性の新種インフルエンザにマスメディアが大騒ぎする。その背後には政府の陰謀が見え隠れする。新種インフルエンザの患者を出した家族は地域社会から差別され、その地域は日本社会から差別され、地域経済は打撃を受ける。
現実社会のパンデミックは大山鳴動してネズミ一匹で終わったが、本書の内容は放射能ノイローゼという現在進行形の問題に重なる。
福島第一原発事故は世界史上最悪クラスの原発事故となった。しかし、福島原発事故に起因する健康被害の原因の大半は放射脳の危険デマを盲信した放射能ノイローゼである。放射能危険デマ拡散の背後には、不安を煽ってベクレルフリーと称する怪しげな食品などを売り付けようという貧困ビジネスがあるために悪質である。
本書の主人公の一人が思索するように、過剰に不安を煽るパンデミックや放射脳に対して市民社会の良識と理性を期待する。
本書の後半では官僚達の暗闘が描かれる。大学病院から出発した海堂作品が政治の世界に舞台を広げていくことは著者及び作品の問題意識から予想される範囲内にある。但し、大学という空間ならばリアリティを持って受け止められる曲者揃いの登場人物達も、役所という世界ではギャップがある。著者が書きたいことを書いている作品である。林田力
http://hayariki.net/

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