2012年9月17日月曜日

東島大『なぜ水俣病は解決できないのか』

東島大『なぜ水俣病は解決できないのか』(弦書房)は水俣病を扱ったルポタージュである。水俣病患者や家族が公害病で苦しめられてきただけでなく、周囲から激しい差別を受けていた。その差別が水俣病が解決できない原因になった。

これは福島第一原発事故によって発生した風評被害・福島差別に重なる。奇しくも水俣病差別という負の歴史を持つ熊本で一部の脱原発や放射能フリー(ベクレルフリー)の運動が危険視されている。良識的な脱原発派からも警戒の声が出ているほどである。放射能汚染の危険を過大に煽り、被災地への差別を助長するためである。

この種の放射脳カルトが幅を効かせると脱原発運動に対する市民の拒否反応を強めてしまう。つまり、放射脳は脱原発運動にも有害である。放射脳を自己と区別して一線を引くことができるか。これは脱原発運動が市民に受け入れられるか否かの試金石になる。

熊本は典型的な公害病である水俣病の発生地である。熊本には水俣病患者の家族が就職や結婚などで差別されたという負の歴史がある。被災地の食材への不安を煽り、福島で復興に取り組む人々を揶揄する熊本の放射脳カルトの言動は、過去に水俣病患者家族を差別した熊本県民と重なる。被災地の食材を差別するベクレルフリーは福島県民差別に向かう危険を内包する。

既に宮本勝彬水俣市長は被災地差別を憂慮する。「原発事故のあった福島県からの避難者に対する差別や偏見を知り、水俣市民はとても心を痛めています。放射線は確かに怖いものです。しかし、事実に基づかない偏見差別、非難中傷は、人としてもっと怖く悲しい行動です」(「水俣病公式確認から55年目を迎える水俣市からの緊急メッセージ」2011年4月26日)

阿部光裕・松柏山常円寺住職は水俣病患者差別と福島差別を同根のものと分析する。「水俣病差別問題も、社会構造が引き起こす諸々の問題はあるにせよ、最終的には国家=正義=清浄というイデオロギーが引き起こす"穢れ"を排除する思想が連綿として続いている現実が差別問題の根底にある」(つるりん和尚のああいえばこうゆう録「水俣病と原発事故」2012年3月15日)。
http://www.hayariki.net/0/faqindex.htm
放射能汚染を穢れと過剰反応する差別意識に染まった放射脳は、無自覚であっても「国家=正義=清浄というイデオロギー」の信奉者である。放射脳の主導を許せば脱原発運動は原子力村と退治することはできず、放射能の危険を煽って怪しげなベクレルフリーの食品を売るような貧困ビジネスのたまり場になるだけである。放射脳に染まったベクレルフリーの飲食店で飲食することは風評被害や福島差別に加担する危険がある。

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