2012年9月16日日曜日

ゴルゴ13の166巻

『ゴルゴ13』166巻の表題作はリニアモーターカー利権を背景とした話である。利権そのものの描き方は表層的である。利権にどっぷり浸かってきた日本のゼネコンが被害者側として描かれており、いくら外資では安全性が損なわれると言ったところで説得力はない。東急建設が暴力団を下請けに使っていた事実が明らかになったように日本のゼネコンにも闇はある。
この話の見所はゴルゴの例外的対応である。ゴルゴは「依頼人は包み隠さず依頼の背景を説明しなければならない」というルールを依頼人に課している。もし依頼人が虚偽の説明をした場合、死の制裁が下される。しかし、今回は相違する。依頼人からは依頼人の面子を立てた人情味ある対応と分析される。
依頼人の動機は私怨であるが、その内容は怒って当然のものである。むしろ表向きの理由の方が日本のゼネコンの利権体質を踏まえれば白々しい。故にゴルゴとしては自分が把握している事実を突き付けて依頼人に本音を吐露させてもよかったのではないか。実際、そのような展開は過去に存在した。この話はゴルゴが例外的対応をしたことが味になっているが、それ故にゴルゴらしくないとも感じてしまう。
次の話は中国の農村が舞台である。経済的利益の独占を目論む腐敗した党幹部によって土地を追い出される農民の怒りと悲しみが描かれる。これは中国の特殊事情ではなく、資本主義化する社会で普遍的に見られる病理である。資本主義黎明期のイギリスでは囲いこみが行われた。
現代日本でも同じである。東急電鉄や東急不動産は二子玉川東地区再開発(二子玉川RIZE)によって二子玉川駅前の土地を独占利用し、駅前の個人商店は追い出された。東急大井町線高架下住民は東急電鉄による一方的な立ち退き被害に遭っている(林田力『二子玉川ライズ反対運動2』)。
その意味で、この話のラストは印象深い。開発による経済的な利益よりも、人々が暮らし続けられる状態にしておくことが人々の幸せであることを示唆している。
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