2012年7月16日月曜日

『子どもの貧困連鎖』v 林田力 wiki記者レビュー

湯浅誠『貧困襲来』(山吹書店、2007年)は日本社会に広がる貧困問題を取り上げた書籍である。著者は貧困者を食い物にする「貧困ビジネス」を告発するなど反貧困の分野で精力的に活動している人物である。『貧困襲来』から貧困問題が社会的・政治的に解決されなければならない問題であることが理解できる。

保坂渉・池谷孝司『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』(光文社、2012年)は子どもの貧困問題を取り上げたルポタージュである。現代日本において貧困は大きな問題である。貧困問題の大きな弊害は親の貧困が子どもにも連鎖することである。

『ルポ 子どもの貧困連鎖』から貧困の要因として日本の福祉の貧困が浮かび上がる。駅前のトイレで寝泊まりする女子高生、車上生活を強いられる保育園児、朝食を求めて保健室に行列する小学生などが紹介されている。未だに中流幻想にしがみつく無関心な市民は見ようとしないだけで、貧困と格差は厳然と存在する。

日本の福祉は申請主義になっている。つまり困窮者が自動的に助けられる仕組みになっていない。お笑い芸人の母親の生活保護受給がバッシングされたが、「本当に必要な人に生活保護が受給されていない」という本質的批判は乏しい。反対に「生活保護受給は甘え」という類の時代錯誤の特殊日本的精神論からのバッシングが中心である。むしろ、大阪府東大阪市の職員約30人の親族が生活保護を受給していたことの方が恣意的な生活保護受給の問題を物語っている。

公的福祉(福祉政策)の貧困によって生まれるものはゼロゼロ物件などの貧困ビジネスである。貧困問題を抱える現代日本のガンはゼロゼロ物件などの貧困ビジネスである。貧困ビジネスは社会的な弱者を食いものにする。貧困ビジネスは貧困を拡大再生産することで利益を上げている。貧しい人から搾取する貧困ビジネスは格差を拡大する要因になっている。

貧困ビジネスは福祉が機能していないところに生まれる。貧困ビジネスは行政が手を出さなくなった領域で収益を上げている。それ故にゼロゼロ物件などの住まいの貧困の解決策として公営住宅を拡充することは正論である(林田力「マンション建設反対と公営住宅」)。

貧困ビジネスを野放しにすれば貧困層は搾取され続ける。貧困ビジネスは規制しなければならない。現実に反貧困の市民運動の活動により、ゼロゼロ物件業者を宅建業法違反で業務停止処分に追い込んだ例がある(林田力「住宅政策の貧困を訴える住まいは人権デー市民集会=東京・渋谷」PJニュース2011年6月15日)。

厄介なことに貧困ビジネスは公的なセーフティネットが機能不全になる中で社会資源の一つとして認知されつつある。そのために目の前の現実論として貧困ビジネスがなくなると貧困層は益々困ることになるという類の議論すら生じる。『ルポ 子どもの貧困連鎖』でも家がない家族が取り上げられるが、そのような家族にとってゼロゼロ物件は必要悪と言う論法である。
http://hayariki.net/0/14.htm
この種の欺瞞的な議論は労働者派遣法でもなされている。「年越し派遣村」に象徴される正規から非正規への置き換えは格差社会の要因であるが、労働者派遣を規制強化すると派遣労働者の働き口が減るとの議論である。ゼロゼロ物件などの住まいの貧困と非正規やワーキング・プアの問題は密接に関係している。

実際は住宅に困っている人々にゼロゼロ物件を紹介することは、金に困っている人にサラ金を紹介するようなものである。ゼロゼロ物件は悪であって、必要悪では決してない。その意味で教育現場から貧困問題のサポートを志向する『ルポ 子どもの貧困連鎖』は貧困ビジネスによる二次被害を防ぐ上でも重要である。

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