2012年6月9日土曜日

『住み続ける権利』v林田力Wikiレビュー

『住み続ける権利』は基本的人権の一つとして「住み続ける権利」を提唱した書籍である。貧困問題や震災を踏まえて住み続ける権利の保障が現代社会において重要な意義を持つとする。
本書の問題意識に共感する。東京都世田谷区では東急電鉄・東急不動産の再開発・二子玉川RIZEによってビル風など住環境が破壊され、住民は生活の危機に直面している(林田力『二子玉川ライズ反対運動』)。東京都品川区では東急大井町線高架下の住民が東急電鉄から一方的に立ち退きを要求され、長年生活してきた住みかを奪われようとしている。ゼロゼロ物件や追い出し屋などの貧困ビジネスによって低所得者の住居は不安定になっている。まさに住み続ける権利が必要である。
日本国憲法は居住移転の自由を保障している。この居住移転の自由は多くの近代憲法で採用されている人権カタログの一つである。移転の自由とセットになっていることが示すように歴史的には住む場所を権力によって縛られない自由として認識されてきた。これは農奴制など封建的制約からの解放という意義を有していた。
しかし、住む場所を縛られない自由との位置付けは、長年平穏に居住していた住居を政治権力や大企業などの社会的権力に奪われない自由との問題意識には結び付きが弱い。そのために新たに居住の権利という人権が提唱された。住み続ける権利というネーミングは有形無形、直接間接の追い出し行為に対抗する人権として、より明確になる。
一方で「住み続ける」ことを強調する表現に抵抗があることも否めない。先祖伝来の土地というような古い感覚と結び付く要素があるためである。それは居住移転の自由が否定した土地への縛り付けを復活させかねない。
東急リバブル東急不動産が不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りした東急不動産だまし売り裁判においても、東急不動産は卑劣にも、だまし売り被害者(林田力)が問題マンションに住み続けることを前提に解決しようとした。売ったら売りっぱなしの無責任な発想である。当然のことながら、林田力は消費者契約法による契約取り消しを貫いた。
本書は震災を念頭に置いているが、福島第一原発事故周辺地域の避難に対する風当たりの強さを踏まえると「住み続ける」ことの強調は有害にさえなる危険がある。新住民と旧住民の感情的対立を引き起こしかねない。
この点で二子玉川RIZE反対運動は参考になる。住み続けてきた住民が中心であるが、景観を訪問者を含めた共有財産と位置付け、近隣住民以外にも開かれた運動にしている。
居住移転の自由は移転しない自由も含まれる。住み続けたい人が住み続けられ、移転したい人が移転できる権利保障が望まれる。
http://www.hayariki.net/

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