2012年6月11日月曜日

『茶道太閤記』v林田力Wikiレビュー2

茶道太閤記は歴史小説である。権力者・豊臣秀吉に屈しなかった芸術家・千利休を描くことがテーマである。しかしながら、利休の美学も利休自身を前面に押し出している訳ではない。前半は佐々成政のエピソードや北政所と茶々の対立などが中心で利休は中々登場しない。
これは利休と秀吉の対立を期待した向きには肩透かしになるかもしれない。一方で佐々成政から描くことに新鮮味と独創性を感じる向きもあるかもしれない。『茶道太閤記』が戦前に描かれたという点に注目する必要がある。
利休と秀吉の対立は歴史物では定番中の定番のテーマである。大河ドラマ『天地人』や『江』でも無理やり主人公と利休に接点を持たせて描かれたほどである。
しかし、利休を権力者に屈服することなく、己の美学を貫いた人物と描くことは巻末の解説によると、大衆小説では『茶道太閤記』が初めてという。確かに戦前は豊臣秀吉をヒーロー扱いしていた。徳川幕府を倒した薩摩藩や長州藩は関ヶ原では西軍に属していた。明治政府としても徳川幕府を貶める必要上、その前の天下人の豊臣秀吉を持ち上げる必要があった。さらに豊臣秀吉の朝鮮出兵は帝国主義に重ねられた。そのような時代背景を踏まえるならば本書の斬新さが理解できる。
豊臣秀吉を好意的に評価する人でも朝鮮出兵や関白秀次一族の虐殺などから晩年は耄碌したと位置付ける人は少なくない。これに対して本書では秀吉に日の出の勢いのあった小田原の陣の時点で秀吉が耄碌したという議論を登場人物にさせている。ここにも本書の先進性がある。
いつの時代でも、成金というものには、必ず建築癖がある」として大阪城や伏見城で知られる豊臣秀吉の建築趣味を総括する。土建国家の戦後日本は国自体が成金と言える。バブル時代の計画のまま進めている二子玉川RIZEは成金的発想の典型である。林田力
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