2012年6月6日水曜日

『ブリーチ』v林田力記者レビューWiki

『ブリーチ』最新刊では見えざる帝国との戦いに突入した。かつてはワンピースやナルトと共に週刊少年ジャンプの三本柱に数えられたブリーチであったが、ピンチになってから必殺技を出すなどの御都合主義的な展開が批判され、失速気味である。起死回生を図りたい新章では、連載当初の好敵手である石田雨竜と関連する話題になっており、一貫性という点で評価できる。
一方で『ブリーチ』失速の要因として描かれるヒーロー像の古さがある。黒崎一護は窮地に陥った過去の敵アランカルを助けることに何の躊躇もない。昨日の敵は今日の友で、目の前に苦しむ人いれば、その人物が過去に悪逆非道な人物であっても助けるという姿勢は従来型のヒーロー像には合致する。
しかし、過去を水に流し、焼け野原から経済大国にしてしまうような前に進むだけの発想が受けなくなった現在においては古くさい。実際、ワンピースのルフィは過去の敵であるハチと再開した際に「お前なんか助けない」と言っている。助ける際も、「たこ焼きが食べたい」が動機であり、道徳的な優等生にはなっていない。
一護は死神代行消失編においても、実はソウル・ソサエティに裏切られている事実が明らかになったが、迷うことなく受け入れた。怒って当然のところで怒らない展開に意表を突かれたが、これはソウル・ソサエティという体制側に実に都合のよい発想である。体制側は個人を信用せずに監視するが、個人は体制の立場を好意的に解釈する。現代日本に当てはめれば盗聴などを自由に進めたい警察権力に好都合である。このような発想は体制や権力に不信感を抱く現代人のヒーロー像からは時代遅れである。
実際、ナルトでは自分が疎外されている不満からイタズラをしかけたり、復讐を考えたりするなど負の感情を丁寧に描いている。それがあるから、サスケとの対比で優等生的な思想を出しても、現代的なヒーローとして感情移入できる。
アランカルはスペイン語風であったが、見えざる帝国はドイツ語風である。個性があり、各々に様々な思惑のあったアランカルと全体主義的な見えざる帝国は、ともにスペインやドイツのステレオタイプなイメージとマッチしている。敵ながら憎めない存在もいたアランカルに比べて、見えざる帝国は無個性である。
日本ではナチスドイツの問題性に対する意識が低い。氣志團がナチス親衛隊風の衣装でサイモン・ウィーゼンタールに告発されたことは記憶に新しい。人権を擁護する弁護士にもハーケンクロイツを掲げる暴走族上がりの恥ずかしい人物がおり、やはりサイモン・ウィーゼンタールに情報提供された。その意味で憎むべき敵勢力を第三帝国を彷彿させる軍国ドイツ風に描くことは日本社会に好影響を及ぼす。林田力

0 件のコメント:

コメントを投稿