2012年6月20日水曜日

万城目学『プリンセス・トヨトミ』v 林田力 記者wikiレビュー

万城目学『プリンセス・トヨトミ』は現代の大阪を舞台にした小説である。2011年に映画化された。会計検査院の調査官が大阪府の検査に行くところから物語が始まる。戦国時代の歴史上の人物を彷彿させる登場人物の名前には歴史ロマンをかきたてる。

豊臣家の末裔や大阪国というキーワードを知ってから本書を読み始めた身には序盤の展開はもどかしい。少年の性同一性障害やイジメは大阪国という本筋との繋がりが見えない。

この箇所が面白味のない理由は悪役であるヤンキーの空虚さにある。悪役だからカッコよい存在である必要はないが、悪の魅力というものすら存在しない。害虫以下の存在である。ヤンキーは時代遅れの恥ずかしい風俗になっているが、悪役としても力不足である(林田力「『白竜LEGEND』第19巻、愚連隊は敵役としても力不足」リアルライブ2011年10月27日)。
http://www12.atpages.jp/~hayariki/haya/4/6.htm
本筋では権力の御都合主義と卑劣さが浮かび上がる。大輔の正体を知った大阪府警の態度がふざけている。それまでの傲岸な態度は棚にあげ、自分達の責任逃れのための役割を大輔に押し付ける。一貫性がなく、強いものにはペコペコし、弱いものには傲慢な日本の役人気質を表している。大輔や耕一が大阪府警を糾弾した場合の展開を期待したくなる。

権力の側の大阪国潰しの陰謀が明らかになるが、陰謀というには粗末で状況を利用したものに過ぎなかった。これも日本の権力の本質を表している。不当な権力に対しては、せめて明白な悪意があるものと思いたいが、それすらも情けない日本の権力には存在しない。(林田力)

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