2012年5月19日土曜日

『住民には法を創る権利がある—小田急高架訴訟大法廷の記録』

小田急高架訴訟弁護団『住民には法を創る権利がある—小田急高架訴訟大法廷の記録』(日本評論社サービスセンター、2006年)は小田急高架訴訟の裁判記録や意見書を収録した書籍である。

小田急訴訟最高裁大法廷判決は行政訴訟分野の画期的判決である。これは小田急線の連続立体交差都市計画事業認可処分の取消訴訟である。最高裁が2005年12月7日に言い渡した大法廷判決は健康や生活環境に著しい被害を直接的に受ける恐れのある周辺住民にも原告適格を認めた。

それまでの判例は開発や公共事業で生じる周辺住民の健康・生活被害を「反射的」なものに過ぎないとして原告適格を否定し、裁判で争うことすら認めない傾向があった。二子玉川ライズ取消訴訟でも裁判所が小田急判決の枠組みに沿って主張立証を促すなど小田急判決はリーディングケースとしての役割を果たしている(林田力「二子玉川ライズ行政訴訟は原告適格の審理へ」PJニュース2011年7月3日)。

『住民には法を創る権利がある』では小田急訴訟最高裁判決が原告適格にとどまらず、行政法総体の変革、新しい環境法の創出など「応答的法への転換」を誕生させたと位置付ける。その趣旨は書名『住民には法を創る権利がある』に凝縮されている。これまで公害問題など住民が被害を受けている場合でも、行政も司法も具体的な法律がないことを理由に救済しないことを正当化する傾向があった。これは誤った法治主義であり、遵法精神である。

最高法規は日本国憲法である。その日本国憲法は基本的人権の尊重を何よりも重視し、幸福追求権や生存権を規定している。住民の幸福追求権や生存権が侵害されている状況で「具体的な法律がないから対応できない」では憲法を擁護し、尊重することにはならない。住民の抱える問題へ応答する義務があり、住民には法を創る権利がある。

小田急訴訟後も住民の闘いは各地で続いている。東急電鉄・東急不動産中心の再開発事業・二子玉川ライズ二期事業にも取消訴訟が提起された。意見書や口頭意見陳述などで寄せられた圧倒的多数の反対意見を無視し、住環境を破壊し、公共性に欠ける二子玉川東第二地区市街地再開発組合の設立を認可したことを違法とする。この二子玉川ライズ取消訴訟で住民側は地域環境を訪問者も含めた共有財産と位置付け、小田急訴訟最高裁判決からも踏み出している。住民本位の行政法の深化・拡大を期待する。(林田力)
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