2012年5月19日土曜日

『デストロイアンドレボリューション』ヤンキーへの怒り

森恒二『デストロイアンドレボリューション』(集英社)は超自然的な能力を持つ高校生が日本社会を変えるためにテロを起こす物語である。主人公マコトは行き場のない怒りと孤独を抱える高校生である。驚異的な能力を身に付けた彼は理不尽な日本社会に破壊的な革命を目論む。

主人公が超自然的な能力を持ち、それを使って社会を変えようとする展開は定番である。代表例として『DEATH NOTE』がある。一方で本書の特徴は主人公が自分の力を用いて積極的に何かをしようとする夜神月的な存在ではないことである。主人公は受け身な人物で、計画は夜神月的存在の同級生が立てている。主人公は同級生の計画が完全に正しいものか葛藤する存在である。

現実社会を舞台にした作品において、超自然的な能力は作品世界のリアリティを破壊しかねないものである。たとえば超自然的な能力を発揮する道具を偶然拾うという展開は、いかにも漫画的である。これに対して本書では主人公のような受け身の人物が超自然的な能力を持つことが説得的に描かれている。

第2巻では主人公らのテロが本格化する。目撃者も痕跡も残さず、次々と巨大建造物を破壊していく。数あるテロのターゲットの中で主人公らが巨大建造物を選択したことは興味深い。「コンクリートから人へ」を掲げた民主党が国民の圧倒的な支持を得たことが示すようにコンクリート建造物は現代日本において社会悪の象徴である。

テレビ局の挑戦を受けるなどテロ活動は社会の注目を集めるようになったが、一方でマコトは煮え切らない態度である。マコトは同級生との人間的な幸福を見つけ、心は揺れる。あくまでテロに対しては抑制的な手法を厳守していたマコトであったが、幸福を侵害するヤンキーには怒りを爆発させる。ここには悪を憎む一つの正義の価値判断が表れている。
http://yaplog.jp/hayariki/archive/636

これまで日本社会には社会の屑とでも言うべきヤンキーに甘過ぎた面がある。それが市川海老蔵に重傷を負わせた関東連合の元暴走族のような無法者を生むことになった。この点でヤンキーに対しては人体に直接攻撃する主人公は小気味良い。

しかし、主人公が正義の行動をするだけでは作品として面白みに欠けることも否めない。ここで活動の主体が主人公から、よりラディカルな思想の持ち主に変更される。能力の使用に躊躇がない人物の暴走が予感される展開となった。(林田力)

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