2012年5月23日水曜日

アソシエイト上巻

『アソシエイト』はジョン・グリシャムの小説である。冒頭から主人公はピンチに陥る。起訴状といっても、金を強請りとるための手段にすぎないという台詞がある。84ページ。民事紛争を有利に進めるために刑事手続きを悪用する輩がいる実態を明らかにする。これは日本でも対岸の火事ではない。
公費の無駄づかいを監視する市民グループは、有人シャトルによる火星探査計画であるかのように反対運動を繰り広げた、という表現がある。189ページ。宇宙開発が典型的な税金の無駄遣いと扱われて興味深い。はやぶさやロケット打ち上げを国を上げて祝う雰囲気のある日本はナイーブである。
グリシャムは、弁護士や法律事務所をテーマとしたリーガルサスペンスの第一人者である。『アソシエイト』は、グリシャムの作品では新しい部類に入る。スマートフォンやサブプライムローンという現代の世相を反映する。
アメリカのリーガルサスペンスでは弁護士ばかりが肥え太る訴訟社会の虚しさが描かれるが、時間単位の報酬請求など対価性を無視した弁護士報酬の仕組みが問題であることが分かる。依頼人にとって無意味な仕事で弁護士は報酬を請求する。積極的に宣伝広告して費用の高い法律事務所に依頼しないなどの工夫で訴訟社会の愚は回避できる。
訴訟社会に対して日本的な譲合いや和の精神を持ち出す立場があるが、これには反対である。消費者や労働者のような弱い立場にいる人々にとっては権利が命綱になる。譲合いや和の精神では虐げられた人々が泣き寝入りを迫られ、焼け野原から経済大国にしてしまうような前に進むことしかできない発想を美徳とするような愚かさに陥ってしまう。
アソシエイトの主人公は必ずしも道徳的に正しい立場ではない。過去の行状を隠蔽する姿勢に嫌悪感を抱く向きもあるだろう。それでも主人公に評価できる点があるとすれば弁護士倫理を守ろうとしているところである。日本では弁護士は公正中立ではないと最初から弁護士倫理を放棄した宣伝をする法律事務所がある。米国社会は多くの問題を抱えているが、先進社会故の問題であり、日本の方が嘆かわしい面がある。

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