2012年4月20日金曜日

圓さん、天下を回る

お金に触れると、その使われ方が分かるという超能力を持った女性を主人公とした小説である。舞台は現代に近い近未来の日本である。経済は疲弊し、膨大な国債によって日本政府はデフォルト寸前である。街には失業者があふれ、暴動に近いデモも頻発している。主人公も企業買収でリストラされて無職という格差社会の犠牲者である。政府は国民の生活を守るためではなく、デフォルトを避けるために国民に隠れて陰謀を企んでいる。まさに悲観的であるが、リアリティのある未来予測になっている。
本書は軽い気持ちで読める小説であるが、登場人物の会話や思考を通して経済理論が展開される。その点で「もしドラ」や「女子大生会計士の事件簿」と似たような味わいがある。しかし、上記の書籍が難しい理論を分かりやすく解説することが魅力であるのに対し、本書の魅力は現代の金融資本主義の矛盾に対する解決策を提示しようとしているところにある。
そこには利子による搾取と支配、それに対抗する価値として自由貨幣という大きな問題もある。一方でショッピングセンター進出による地域商店街の荒廃というローカルな話題もある。ショッピングセンター出店の問題は第一次的には大企業と自営業者の利害対立である。しかし、本書では買い物難民という点で、消費者の問題であることを明らかにする。さらに効率的な企業が非効率な企業を淘汰することで市場が発展するというような新自由主義的な話にもならない。ショッピングセンターは無責任にも撤退し、後には荒廃と買い物難民だけが残るという展開が待っているためである。二子玉川ライズの行く末を見る思いがした。林田力
http://hayariki.net/

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