2012年4月1日日曜日

魔法の代償下巻

あまりにあっけなく敵の攻撃を受けてしまったヴァニエルであったが、下巻では攻撃が偶発的なものではなく、陰謀の存在が仄めかされる。同時に敵対勢力の卑劣さも浮き彫りになる。
「ぼくの敵はぼくと面と向かいあおうとせずに、他人を通じてぼくを攻撃してくる」66頁
これは東急不動産だまし売り裁判で悪質な不動産業者と闘った経験のある林田力にも思い当たる内容である。
ヴァニエルは物語世界の中でも圧倒的に強力な魔法使いである。そのような存在と対等に戦える敵キャラクターを安易に登場させるならば物語の世界観を破壊する。敵が卑怯者であることは、ある意味で必然的である。
ヴァニエルは自らの死を覚悟した戦いにもステフェンを同行させる。ステフェンは戦闘力では足手まといになるが、物語の中で同行する存在意義が与えられている。
下巻でも現代社会に通じる含蓄は健在である。魔法使者のサヴィルはテレポーテーションの効果のある門の魔法で体力を消耗してしまう。そのために人間が快適に座ったままで旅ができる技術の進歩を夢想する。これは現代文明の鉄道や飛行機そのものである。サヴィルは、そのような旅は「見知らぬ人々の力量を信じてわが身を委ねることになる」と考える。20頁。高度に分業が確立した現代文明への皮肉にもなる。
魔法の代償では刊行済みのヴァルデマール年代記で言及されていた様々なエピソードや人物について語られる。それが作品世界を豊かで一貫性あるものにしている。作者が作品世界を大切にしていることが分かる。
http://hayariki.net/

0 件のコメント:

コメントを投稿