2012年3月8日木曜日

ビリーバット

登場人物達の行動も虚しく、歴史として知られている通りにケネディ大統領が暗殺され、オズワルドの単独犯と判断され、オズワルドも暗殺される。過去を舞台としたSF作品は歴史のイフが醍醐味であるが、その結果として史実から離れすぎると物語が収拾つかなくなる。ケネディ暗殺の顛末をあっさりとまとめたことは物語が現実の一側面らしさを失わない効果を持たせる。
舞台は再び日本に移る。畳にも座り慣れないという日系人ジャッキー・モモチの日本人離れしたスタンスが新鮮な笑いを誘う。外見は日本人と変わらないが、アメリカで生まれ育ったジャッキーにとって日本は異郷でしかない。日本人は日系人ということで勝手に日本人と同じ意識を抱きがちである。かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」で最後に「やまと」に立ちふさがった米海軍の空母の艦長は日系人で、自分が日系人であることの意味を問い続ける存在と描かれた。それに比べるとジャッキーは自然体である。
舞台が日本に戻ったことで戦国時代の忍者のエピソードが意味を持ってくる。当初、ビリーバットは下山事件という戦後史の闇に光をあてる作品として注目された。しかし、その後に続いた忍者のエピソードは現代史を楽しみにしていた読者を裏切るものであった。二十世紀少年やモンスターでも過去と現在が同時進行し、長い作品の中で少しずつ繋がっていく手法が採られた。これらは、あくまで同じ登場人物達の過去と現在で一つの物語と理解して読むことができた。これに対してビリーバットはイエス・キリストの磔のエピソードが登場するなど話が飛びすぎ、読者が置いてけぼりにされる傾向があった。この巻で、ようやく戦国時代の巻物が本編に結び付いた。この巻でも戦国時代のエピソードが挿入されるが、どれもコンパクトにまとめられている。スピードアップした展開に期待したい。林田力
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