2012年3月31日土曜日

魔法の代償上巻

魔法の代償は架空の王国ヴァルデマールを舞台とした物語である。ヴァルデマール年代記の一冊である。ヴァルデマールは中世ヨーロッパのような社会であるが、特別な素質を持った人々が魔法や超自然的な能力を使える世界である。
詩人ステフェンは類い希なる能力のために治療者達の研究材料になるが、治療者達に自分の能力を示し続けて精力を消耗してしまう。優れた能力者でも有限という点でリアリティがある。友人のアドバイスを受けて治療者の依頼を頭ごなしに断るステファンの演技が魅力的である。155頁。頑張ることを美徳とする特殊日本的精神論とは対照的である。日本で過労死という翻訳不可能な現象が起こる訳である。
この世界では資格を持った魔法使いを魔法使者、それ以外の能力者を使者と呼ぶ。魔法使者と使者は能力の種類の相違による区別であり、ある分野では魔法使者よりも使者が優れているものであるが、魔法使者の方が格上に思われている。職業を貴賤と結び付ける発想である。主人公ヴァニエルは、この固定観念を改めようとする。
ヴァニエルには「共に歩むもの」イファンデスと呼ばれる馬の姿をした超自然的存在がいる。外見は馬なので知らない人が見たら、知性を持っているとは思わない。知っているステフェンでも見かけ通りの存在でないことを自分に言い聞かせなければならなかった。ところが、ヴァニエルの母のトリーサは貴婦人の客人に対するように自然にイファンデスに話しかけた。これを見てステファンは愕然とする。302頁。ここからは差別について考えさせられる。差別はしてはいけないと思うあまり、不自然になることもある。ステフェンの境地にはなるように心がけているが、トリーサの境地は容易ではない。林田力
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